運動前の静的ストレッチの是非について考える|フィジオ福岡 ストレッチについて考える

みなさんは運動する前にストレッチを行っていますか?
古くは運動前には必ずストレッチを行いましょうという習慣がありましたが、最近では特に静的なストレッチに関して競技直前のアップで行うことが減ってきました。
その一つの理由としては、近年の複数の研究によって、静的ストレッチングが筋力、パワー、スピード、パフォーマンスなどを低下させることが示され、あまりいいように考えられなくなってきたことが挙げられます。
しかしながら、実際に全く筋を伸ばさずに運動するというのはいいのかという疑問は残ります。
やはり障害をかかえながら運動するヒトや、例えば全身筋肉痛の方が運動するような、そもそもが筋伸張性に問題を抱えている方にとってはストレッチからうける恩恵は大きなものになると思います。

静的ストレッチが肉離れの減少に役立つという報告もある。

実際に様々な論文をレビューしてみると、これらネガティブな研究とは異なり、ストレッチの実施に対して、ポジティブな意見も多く報告されています。
例えば、前に報告されたような筋力、パワー、スピードに重要な低下はみられなかったと報告しているもの、静的なストレッチが肉離れの減少に役立ちうると報告しているものなどです。
これらの報告は必ずしも、ストレッチが悪しきものであるということを否定できる要素になりえます。

ストレッチがパフォーマンス低下につながると言われる原因のひとつは、ストレッチを継続する時間の長さに関連しているという報告もあります。
ある研究では、ストレッチの継続時間がパフォーマンスに与える影響ストレッチの継続時間を基に研究結果を分析してみると、30秒以下のストレッチにはパフォーマンスの低下との相関性はない一方で、60秒以上のストレッチはパフォーマンスを低下させていることを報告しています。(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21659901
この論文では、30秒以下のストレッチがパフォーマンスをはっきりと低下させた研究は14%しかないのに対し、1分以上ではその数は61%であると報告しています。
これは大きな違いであり、この報告を考えればストレッチを短い時間行うことのリスクは比較的低いということが考えられますし、仮に1分以上ストレッチを継続しても、その100%がパフォーマンスを低下させるものではないということがいえることにもなります。
全てをネガティブに捉えるべきではないという点もこの報告をみると、考えていく必要性が出てくるのではないでしょうか?

静的ストレッチと動的ストレッチ、その両方を取り入れるべきである。

ストレッチを行うことでの考えられるパフォーマンス低下の要素として、静的ストレッチを行ってから競技を開始するまでの時間的要素が考えられます。
発表されている研究の多くは、ストレッチの即時反応を評価するものが多いというのがポイントになるかと思います。
要するに、ストレッチした直後に筋のパフォーマンスがどうなっているかを評価するということ。
しかしながら、実際にはストレッチしてすぐに運動するってことはそんなに多くないはずです。
アップしてから実際にプレーするまでの時間が1分もないってことは少ないですよね。
このストレッチのタイミングは一つの論題であり、様々な研究によってストレッチから競技開始までの時間を5分程度にすることが推奨されています。
しっかり筋を伸ばした後にすぐ動くのではなく、運動するまでの時間の5分前にはしっかりと筋を伸ばしておけばいいということ。
こうすることで静的ストレッチのパフォーマンス低下の影響は限りなく抑えることが可能ではないかということになります。
そこで運動開始までの流れとして、静的ストレッチを行い、その後動的ストレッチを行って、実際の運動に入っていくという流れが推奨されだしました。
事実、ストレッチがパフォーマンスを低下させるという研究による反射的反応の影響を考慮してか、スポーツの前には静的ストレッチではなく、動的ストレッチを行うようになってきた経緯もあります。
最近の研究を考えると、まず静的ストレッチ、そしてその後に動的ストレッチを組み合わせて行うことで、静的ストレッチのネガティブな側面が、動的ストレッチを行うことによって解消できるのではないかというように考えられてきています。
静的ストレッチと動的ストレッチを両方用いることで、少なくとも、静的ストレッチから運動に至るまでの時間を確保することになるため、両方のストレッチを取り入れるべきであるという理由になりえます。

柔軟性改善のための静的ストレッチ

静的ストレッチングの効果に関して、システマティックレビューがいくつも行われており、短期的あるいは長期的な柔軟性向上効果が報告されています。
ストレッチング直後の柔軟性向上は、一定の伸張を加えていると組織の抵抗が減少することによって起こると考えられています。
しかし、この変化は一時的なもので時間が経つとストレッチング前に戻ります。
また、どのくらいストレッチできるかは、組織が伸張された際の痛みの感覚や伸張に対する耐性によって規定されることから、ストレッチング後の可動域改善はこれらの感覚の変化から起きているとする意見があります。
その報告によれば8週間以内のストレッチングで改善する柔軟性は感覚の変化によって起こるものであり、短期的には組織の長さが増加して起きるものではないとしています。
短縮した組織を伸張するためにはストレッチングにより微細な損傷を引き起こし、コラーゲン線維などのリモデリングを促進させることが考えられます。
一方、リモデリングが完成されるまでには180日以上かかるとされており実際には長期的な介入が必要と思われます。
臨床的には短縮した組織の身長は穏やかな持続伸張で行い、塑性域に達したら関節包では6秒程度、筋では15秒から30秒、場合によっては1分以上伸張しながら保持して休みをいれて数回繰り返すと効果的とされています。
身体を柔らかくするために筋伸張性を高めようとするのであれば、かなり長期的な視点でストレッチに取り組む必要性があるということになります。

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