関節の構造強度とフォースカップルの働き| フィジオ福岡 関節運動学

ヒトの関節は骨を支柱に人体や筋、腱、その他の軟部組織によって構成されています。
それぞれの関節には壊れずに大きな力を利用できる適切な可動域や可動ルートが存在します。
その可動域・可動ルートを外れた時、材料(組織)に不適切な力が加わります。

加わる外力や内力の大きさだけでなく、力の方向も大切な要素。

スポーツ医学の視点から、身体のどのパーツにどのような力が加わるかという知識に加えて、材料力学の視点から、そのパーツの特性やその強みと弱みの知識を持つ必要があります。
膝に代表される蝶番関節を例にすると、この関節の大きな特徴は適切な可動域が一方向に対して広く、その他の方向に対しては狭いということです。
この適切な可動域や可動ルートを外れて力が加わると、関節の限界強度が低下します。
このように関節の構造強度において、加わる外力や内力の大きさだけでなく、力の方向も大切な要素のひとつなのです。

スポーツでは日常生活と比べて、より大きく、より多方向からの力が身体に加わります。
したがってスポーツにおいては、身体(構造体)に対してより高い構造強度が必要になります。
そして、より高い構造強度を得るには、関節を扱うスキル(身体スキル)と関節を構成する材料(骨や軟部組織など)の両面の強化が求められます。
身体は複数の関節で構成されている構造体です。
1つの関節にとって最適な状態をつくるだけでは十分ではありません。
複数の関節をコーディネートし、力を分散して、身体全体の構造強度を高めることが必要になります。

フォースカップルとは、関節軸の安定の為に働く筋肉の働きのこと。

フォースカップルとは、関節軸の安定の為に働く筋肉の働きのことです。
筋肉の働き方として、ある一定の運動開始や実行に直接働く筋を主働筋といいます。
ある特定の主動筋の反対の作用を持つと考えられている筋や筋群が、拮抗筋といわれ、
主動筋と拮抗筋に対して、ある特定の運動時に協力して働く一対の筋群は共同筋と考えられています。

例えば、手関節の屈曲時の尺側手根屈筋や橈側手根屈筋などは、手関節屈曲に協働的に収縮する例となります。
そして、もう一つの協働筋の例がフォースカップルです。
フォースカップルは2つ以上の筋がペアとなって同時に反対方向に力を生むときに生じ、力の中心に対して純粋な回転を与えます。
よくいわれる例えが車のハンドルで、2つの手で回す場合がイメージしやすいです。
右手が下に左手が上に引くと、ハンドルは右に回転します。
両手は異なる方向に動きますが、ハンドル自体には同じ回転方向のトルクを与えるのです。
フォースカップルの機能は、複数の筋が協働して働くことで単一の筋に対する負荷を軽減さ、関節運動時に関節の運動軸を安定させる為にとても重要な機能です。

間違った体の使い方が続けば、オーバーユースによってその機能が働かなくなったりすることも。

フォースカップルの例としては、腕の挙上にとって必須の要素である肩甲骨上方回旋運動時の僧帽筋上部および下部線維と前鋸筋の働きです。
この力学は、回転ドアを押して歩いている3人の人に例えられます。
異なる直進方向にドアのレールを押している人により同じ方向の回転運動が生じ、3つの筋の相互作用は肩甲骨回旋時の運動のコントロールレベルを高め安定させます。
特に前鋸筋はこの運動を行ううえで重要です。
前鋸筋の筋力低下があると、腕を上げる際に肩甲骨を肋骨に引きつけておくことができなくなり、翼状肩甲(肩甲骨が鳥の羽のように浮く状態)になり、上腕骨と鎖骨の先端部が狭くなるという状況が起こる。
腕の挙上の動きの中で、その狭くなった関節を棘上筋や滑液包が動くことで、引っかかりや挟み込み(インピンジメント)が起こり痛みを起こしてしまいます。
一般的に野球肩として知られている症状で、野球・テニス・バレーボールなど種目の障害として知られています。

また、骨盤の前傾は、股関節屈筋である腸腰筋、大腿直筋と腰部伸筋脊柱起立筋によってフォースカップルがつくられ、骨盤の後傾は腹直筋や外腹斜筋の腹筋群と股関節伸筋である大殿筋やハムストリングスがフォースカップルとなります。
このフォースカップル以外にも関節を安定させる機能を私たちの体は持っていますが、間違った体の使い方が続いたり、オーバーユースによってその機能が働かなくなったりすることはよくあります。
スポーツをするのであれば、パフォーマンスの向上の為にも正しい体の使い方を身につけるトレーニングがトレーニング後のケアにも、意識を向けていきましょう。

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