シンスプリントとその対策|フィジオ福岡 シンスプリントを考える

シンスプリントとは、一般的に脛骨の遠位部の内側後縁に沿う疼痛が発生するスポーツ障害の1つです。
下腿の前方外則の疼痛を示すものとは区別されています。

shin-splints (1)

下腿後面の筋群(特に内側のヒラメ筋・長趾屈筋・後脛骨筋など)やこれらを覆う筋膜の牽引により脛骨の骨膜に微細損傷をきたしたもの。

軽症例まで含めると、発症頻度は非常に高いスポーツ障害だといえます。
病態は、下腿後面の筋群(特に内側のヒラメ筋・長趾屈筋・後脛骨筋など)やこれらを覆う筋膜の牽引により脛骨の骨膜に微細損傷をきたしたものとなります。
下腿内側の筋群の疲労による伸張性の低下や足部の過回内、足部の疲労による衝撃緩衝能力の低下などが発生基盤となります。
初心者に発生しやすいのですが、走りこみの時期には初心者に限らず発生が多いようです。
脛骨の疲労骨折との鑑別診断が難しいところですが、疲労骨折では疼痛・圧痛が局在する傾向があるのに対して、シンスプリントでは脛骨の内足後縁に沿って5~10cmの広がりを持つのが特徴です。
ただし、シンスプリントと疲労骨折は必ずしも分離できず、同時に発生する場合もあります。
治療は、急性期の安静とリハビリテーションによる保存療法が一般的ですが、難治例に対しては手術が行われることもあります。
筋・筋膜による牽引の結果として微細損傷を反復し変性した筋膜・骨膜移行部を切除する方法がとられます。
手術後は筋膜切離部の疼痛が消失するまでは安静となります。

Marathon, black silhouettes of runners on the sunset

ランニングなどを含むトレーニング中にシンスプリントと思われる下腿内側部の疼痛が出現した場合には、トレーニングを中止して疼痛部のアイシングを行います。
また、下腿内側部後面の筋群(ヒラメ筋・長趾屈筋・後脛骨筋など)のストレッチやマッサージも行い、局所の炎症が鎮静化した後には、筋・筋膜の緊張による牽引刺激を軽減させる目的で、下腿を弾力包帯やサポーターで圧迫固定しておく必要があります。

患部の炎症を軽減させることと、ヒラメ筋・長趾屈筋・後脛骨筋などの下腿内側後面の筋群の緊張や腫脹を低下させることを目標に。

安静時のトレーニングは、患部の炎症を軽減させることと、ヒラメ筋・長趾屈筋・後脛骨筋などの下腿内側後面の筋群の緊張や腫脹を低下させることを目標に行います。
炎症の軽減に対してはアイシングの励行で対処し、筋の緊張や腫脹を低下させる目的として温熱療法(ホットパック・超音波・マイクロ波)を行います。
また、マッサージや鍼の使用も有効な手段だと考えられます。
下腿三頭筋、特にヒラメ筋のストレッチングは温熱療法後に十分に行う必要があります。

Calf-Stretch

足関節周囲筋の筋力強化は、患部の疼痛が発生しない範囲で等尺性訓練から開始していき、徐々に等張性訓練へと進めていきます。
歩行の際、明らかに患部の疼痛がある場合は、足底板やテーピングを用いて踵部の挙上と内側縦アーチの保持を行います。
回復期のトレーニングは、足関節周囲の柔軟性・筋力バランスの改善や正しい動きの再獲得を目的として、患部の炎症を再燃させない範囲でトレーニングを行っていきます。
局所のウォーミングアップとしてホットパックを利用して患部を温めた後にストレッチングを行い、その後持久性・心肺機能の訓練を兼ねて全身的なウォーミングアップを自転車エルゴメーターやウォーキングなどで行います。
筋力トレーニングは、下肢全体の大きな抗重力筋の維持強化に重要なトレーニングとして、レッグプレスやスクワットを行います。
スクワットはフットワークや下肢全体の協調的な動きの再獲得のためにも有用だといえます。
下腿三頭筋の強化には、カーフレイズやゴムチューブを使用した足関節底屈の抵抗訓練を行います。
また、足関節周囲筋群のバランスを考えた強化訓練も進めていき、足関節の内反・外反、底屈・背屈に加えて、足部の内在筋の強化(タオルギャザー・足趾の開大訓練)も合わせて行います。
クールダウン後は、患部のアイシングを十分に行い、弾力包帯やサポーターで下腿を保護します。

シンスプリントの発生要因として、身体要因・環境要因・トレーニング要因が考えられる。

スポーツ現場での復帰までのトレーニングは、種目動作の再学習と再発予防の強化訓練を目的として行います。
ウォーミングアップには回復期と同様に十分に時間をかけ、動作の再学習としてジャンプと着地・横への動き(サイドステップやクロスステップなどの各種ステップ動作)、コーンドリルなどの練習を行います。
その際、着地に十分注意を払い、できる限り望ましいパターンでの動きを身につけます。

star drill

足関節周囲筋群の筋力トレーニングは引き続き補強訓練として継続します。
シンスプリントの発生要因として、身体要因・環境要因・トレーニング要因が考えられます。
身体要因としては、過回内足、偏平足などのアライメント不良、足関節の可動域制限(背屈)、下腿三頭筋の伸張性不足(疲労も含む)、足部での衝撃緩衝能の不足(凹足・足部の疲労)などがあります。
環境要因としては、シューズ、サーフェス、トラックのコーナー走、ロードの片側を走る(傾斜がある場合)などがあります。
トレーニング要因としては、量、頻度・強度が高い、フットワーク、フォームなどが考えられます。
このうち特に身体要因について、足底板やテーピングを用いて回内の調整を施したり、アーチ保持の為の筋群のトレーニングを行うなどの対策を講じておくことは、再発を予防する上で非常に重要です。

 

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