顎関節と姿勢|フィジオ福岡 デスクワークの姿勢をどう変えるか

筋解剖学に基づくと、頭部の位置が下顎の安静位置に影響を及ぼすと考えることは容易なものです。たとえば、慢性的な頭部前方位を呈した姿勢において、突出された頭部を観察すると、上部胸郭と下部頚椎の屈曲と、上部頚椎と頭蓋頚椎部の伸展を伴っていることが分かります。この姿勢は、舌骨の下方・後方への牽引力を作り出し、胸骨舌骨筋、肩甲舌骨筋などの舌骨下筋群を伸張させます。その牽引は、顎二腹筋前腹のような舌骨上筋を介して、下顎に伝えられます。その結果、下顎は後退と下制の方向に引かれます。

頭部の位置が下顎の安静位置に影響を及ぼす

肩甲舌骨筋は肩甲骨に付着しているため、肩甲帯の不良姿勢、たとえば、極端な下制や下方回旋、肩甲胸郭関節での後退は筋をさらに伸張位にさせ、下顎を引っ張ります。下顎の安静位置を変えることは、下顎窩内の関節突起の位置を変化させます。関節突起が後方へ変位すると、繊細な後円板層は圧迫され、炎症や筋スパズムを引き起こしてしまいます。下顎を突き出す姿勢を取ってしまうのはこの後円板層の圧迫を避けるために自然に起こりうるものであることや、突き出すことで起こる筋のスパズムが結果的に関節円板を関節突起に対して前内方へ異常に位置させることが考えられます。

この、「肩甲胸郭関節の異常姿勢は下顎の位置に影響を及ぼし、最終的に顎関節に対する負荷を増加させる」という前提は、姿勢や運動の評価だけでなく、顎関節障害の評価においても臨床的な見解を補強するものであると言えます。

顎関節の機能

顎関節は、咀嚼のあいだだけでなく、嚥下、会話、歌唱、さらに日常のありとあらゆる場面でも、1日につき数千回も物理的に噛み合います。これらの運動が関節表面と関節周囲結合組織に対して常に圧迫と剪断力を加えます。その力は、例えば、飲み込むときの非常に小さいものから食物を活発に噛むときの数百ニュートンまでの範囲に及びます。これらの力は、主として筋の作用によって発生します。

筋は、食物を飲み込む前に、前後左右に下顎を動かす動きだけではなく、口の開閉とも同期しながら相互に作用し合います。大きく多方向の力に加えて、ささやくときの本の数ミリから大きな食べ物を噛むときの数センチまでの下顎骨の大きな下制を可能にしなければなりません。この顎関節の独特の機能的要求は、関節の特徴的な構造によって反映されます。その構造は、関節突起の回転と並進ができるよう緩んだようになっており、この滑りと蝶番関節の組み合わせが下顎骨の動きを潜在的に増やします。潜在的かつ強力で反復的な力から関節を保護するために、関節表面は、線維軟骨の層で覆われ、部分的に厚い関節円板によって覆われています。

顎関節にみる関節円板

関節円板のおもな機能は、関節包内運動を導き、関節を安定させることですが、関節表面の負荷を減らすことが特に重要なものであると考えられています。下顎骨の運動中、接触による負荷を減らすために、特に下顎骨の関節突起と傾斜する関節隆起の間で、関節円板は絶えず最適な位置に移動します。関節円板の位置の決定は、伸ばされた関節包と後円板層からの他動的張力、関節突起からの圧縮と外側翼突筋の浅頭からの随意的張力の組み合わせによってなされます。関節円板が潜在的な有害な負荷から関節を保護することができず、一時的にまたは永久的に位置がずれる人もいます。さらに、重度で慢性的な例では、関節円板内障によって、非常に強い痛みを伴い、下顎骨の運動の制限を引き起こすかもしれません。また、関節周囲組織の慢性炎症や退化を進めることもあります。

 

関連記事

  1. 1Gの重力と運動と骨の形成の関係|フィジオ福岡 高齢者のためのトレーニ…

  2. 代謝をあげよう①

  3. 若々しい肌を保つ

  4. 呼吸と姿勢を整えて痩せやすい体を手にいれる

  5. 基準値の見方

  6. タンク型の回復装置とは

閉じる