筋肉痛とトレーニング効果

「筋肉痛の有無は筋力向上・筋肥大効果と関係があるのか?」ということは昔から議論されてきました。現在のところ、「関係あるかもしれないし、ないかもしれない」と言ったところでしょうか。

「痛み」は誰もが知覚できる感覚であり不快であることから、研究対象としても社会的に非常に重視されている分野です。生体には痛みを受容する受容器があり、侵害受容器と呼ばれ、温度刺激を受容する「thermonociceptor」、機械刺激を受容する「mechanociceptor」、化学的刺激を含めたさまざまな刺激を受容する「polymodalnociceptor」が知られています。痛みとは、これらの侵害受容器から情報が脳に送られた際に「痛い」と感じられる感覚を指しています。近年、末梢組織で痛みの原因となる物質はなんなのか、という研究が精力的に行われており、その結果、セロトニン、ヒスタミン、プロスタグランジン(PG)、アセチルコリン、ブラジキニンなどが関与していると報告されています。仮に筋肉痛とトレーニング効果が関係しないのであれば、鎮痛薬を摂取してこれらの生成を阻害しても問題ないように思われます。

現在、鎮痛剤の主流は非ステロイドデイ抗炎症剤(NSAIDs)であり、PGの生成に関わるcyclooxygenase-2(COX-2)の活性化を抑え、PGのの産生を阻害することにより鎮痛効果を発揮します。PGはタンパク質合成にも関与していることが報告されており、骨格筋でもタンパク質合成に関わっています。このことから、NSAIDsによりCOX-2活性を阻害すると、筋肉痛は抑制できるかもしれませんが、筋肥大も抑制されてしまう可能性が考えられます。さまざまな研究から、NSAIDsは運動刺激による筋タンパク質合成や筋サテライト細胞の増殖を抑制し、筋肥大効果を抑制する可能性があります。

筋肉痛が起きなくても筋肥大が起こることは体験していると思います。これらのことから、「筋肉痛は筋肥大と関係ないかもしれないが、筋肉痛になった場合にそれを抑えるために抗炎症剤を用いるのは筋肥大効果を損なう(suppress pain,suppress gain)」ということが言えるのではないでしょうか。

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