「パワーポジション」と骨盤傾斜|フィジオ福岡 トレーニング科学

スポーツの現場において適切な準備姿勢、すなわち素早い動作を行うための動きやすい構えの姿勢を一般的に「パワーポジション」と呼んでいます。
Howorthは、脚を肩幅より開き、頚部・体幹を前傾させて、股関節・膝関節・足関節を軽度屈曲した姿勢を「Basic-dynamic-posture」と定義しており、この姿勢はどの方向にも力強く運動することができるとしています。
同様の姿勢をNASMという協会では「アスレティック・ポジション」と呼んでいて、このポジションは機能的に安定したポジションで素早く前後左右に移動できる姿勢であると定義しています。

実際のスポーツ動作を考えてみると、素早い動きの獲得のためにはこのような姿勢を瞬時に整えることが重要であると考えられます。
このような素早い動きを可能にする構え姿勢に影響する要因として様々な研究が進み、多くの報告で各下肢の関節角度の変化に着目したものなどが存在しますが、その他の要素の一つに「骨盤の傾斜角度」があります。

骨盤は、立位時の上前腸骨棘 (ASIS)と上後腸骨棘 (PSIS)を結んだ線分と水平線とのなす角を「骨盤傾斜角度」と定義され、その角度は通常8~11度であるという報告があります。
つまり、パワーポジション時の骨盤傾斜は立位時と同様に前傾位を保っているものと考えることができるでしょう。
実際に骨盤の角度変化と動作のパフォーマンスの関係を検討した研究において、骨盤の前傾がジャンプ能力の向上につながると報告されています。

さらにSleivertの報告では、ジャンプスクワット時のパワーと5mスプリントのタイムには相関があり、ジャンプ能力とスプリントの加速には関係があるとしている報告があり、骨盤の前傾は股関節伸展筋力の向上をもたらし、蹴り出しの強さに影響を与えていることが推測されています。
またNovacheckによって、骨盤前傾位が蹴りだしの強さや早い加速を 生み出す要因として、骨盤の前傾が股関節伸展筋群の受動的な筋張力を高めることが挙げられています。

これらの研究から骨盤の前傾が股関節伸展動作のパフォーマンスにポジティブに作用することがわかっています。
言い換えるならば、骨盤の傾斜を前傾位、中間位(ニュートラルポジション)、後傾位の3つの姿勢をとらせた際、後傾位に近づくほど反応動作は遅くなりさらに蹴り出す力も小さくなるのではないかという考え方もできます。

近年のジュニアアスリートの姿勢をみると非常に猫背の姿勢や骨盤後傾の選手が多いようにも感じます。
パフォーマンスアップのためにも、姿勢の改善を行い、うまく股関節伸展筋群を使えるようにしていくことが重要であり、アスリートにおける「パワーポジション」の習得は適切な動作、力発揮を行う上では重要なポイントになるということがわかります。

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