「ミラーニューロン」と共感力

「ミラーニューロン」とは、自分の動作と他人の動作に「ミラー鏡」のように同じような反応をする神経細胞のことです。

このニューロンは,サルを使った実験で発見されました。
サルの複側運動前皮質の尾側(F5野)に、サルが「意味のある複雑な動作」を観察している時にだけ活性化し、また他の運動ニューロンと同じようにサルが実際にそれと同じ動作を実行している時にも活性化するニューロンが発見されたことに始まります。

簡単に言うと、他者が行っている動作を観察しているだけで、自分の脳の中ではその動作を行っているかのような神経細胞の働きが活性化しているということです。

では、ミラーニューロンの働きを実生活で考えてみましょう。

例えば、動きの上手な先生の身体の動きを観察していると、その先生の脳が活動しているように自分の脳が活性化される、上手な選手の動きを見ることによって自分の腕をあげることができる、なんてことありませんか?

これはミラーニューロンの働きのおかげと言われています。

上手な人の動きを観察することで、上手に動くよう指示している高段者の脳の活動と同じ脳の活動が自分の脳内で発生します。

逆にミラーニューロンの存在は、ヘタな人の動きをみていると、自分の頭のなかで下手な動きの回路が活性化され、いわゆる「ヘタがうつる」ということもわかります。

トレーナー自身がしっかり動けないと、トレーニングなんて教えられないってのはこの辺が重要ですね。

さらにミラーニューロンの働きは運動学習だけでなく、ヒトとしての基本的な働きであるコミュニケーションにも関与しているとも言われています。

例えば、TVを見ていて注射のシーンが映っただけでも、なんか「痛い」「痛そう」と感じたことはありませんか?

あの感覚も、ミラーニューロンによるものと言われています。

痛みを感じたときに活性化する脳の部分は、痛そうにしている人を見たとき、見ている人の脳の中でも、痛みを感じている人と同じ部位が活性化して、痛みに共感することができます。

このように、ミラーニューロンは他者との感情の共有、つまり共感することにも役立っています。

つまりミラーニューロンは人が社会生活を行う上で非常に重要な役目をしているってこと。

こう考えると、ミラーニューロンとは、ヒトにおける高度なコミュニケーションの素地を提供するという点で、他者に無意識的、自動的に共感する神経細胞であるといえるのではないでしょうか?

「空気が読めない」「ほんとKY!(死語ですか)」なんて言われる方は、ぜひミラーニューロンを活性化させて、「共感力」を磨くといいのかもですね!

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