「結果の知識」と「学習の転移」 | フィジオ福岡 運動学習を考える

わたしたち人間は、繰り返し練習することにより自転車に乗ったりピアノを弾いたりすることができるようになります。
いわゆる「反復練習」です。
日常生活する上で、いいろいろなことができるようになる、そういった運動技能の獲得は日常生活にとって必須の機能であり身近な問題です。

運動技能の学習は認知の段階、連合の段階、自律の段階の3つに分けられています。

練習を通じて、運動が未熟な段階から熟練した段階へと変容していく過程は運動学習の重要なテーマの一つになりますが、この問題は運動系や感覚系にとどまらず、「注意」や「自動化」といった知覚系、認知系の働き、さらには記憶にも関わる複雑な問題になります。
運動技能の学習は、知覚運動協応の習熟であるという観点から、知覚運動学習と呼ばれることもあり、運動技能の学習は認知の段階、連合の段階、自律の段階の3つに分けられています。

技能学習は、学習者がまず課題についての知識を得ることから始まり、これが「認知」の段階になり、次の「連合」の段階では練習により遂行の誤りが減少し遂行の速度も増す段階に移行していきます。
この段階では、どう動くとどうなるのかといった行動と結果を感覚統合で解釈しフィードバックしていくことが重要になると考えられます。
このフィードバックにおける「自分の行動が目標の行動とどの程度異なっているかという情報」は、「結果の知識」と呼ばれ、技能学習に重要な役割を果たしていると考えられています。

最後の段階である運動の「自律」段階では、このように獲得されていった一連の動作がまとまって遂行されるようになり、動作遂行がスムーズになる段階です。
つまり、自分が意図した運動がスムーズにかつ自動的に行われる段階のことをいいます。
こうした運動学習における自動化は、課題遂行そのものに意識を必要とする制御的処理からそれを必要としない自動的処理へと変容し、さらに学習が進むにつれて「認知的負荷」が軽減されていくことに関連しているといわれています。

運動神経がいい子、いわゆる運動感覚に優れた子というのは、「学習の転移」が起こりやすいので、いわゆる「あの子は何をやらせてもできるよね」みたいなことが生じるということ。

また練習して習得した技能は、記憶に留めて必要なときに表出することが可能になりますが、それ以外に練習して得た技能は他の場面に応用することができるという側面も指摘されています。
つまり、ある技能を習得しておくと別の新しい技能の習得に有利であるということがいえるということ。
例えばですが、ヴァイオリンが弾ける人はチェロの学習が容易であろうし、スケートのできる人はスキーの学習が早いであろうと推測されるようなことです。
このような技能の学習はその特定の技能の習得だけでなく、類似の技能の習得もなっていると考えられ、このように「ある学習の効果が類似の学習に影響すること」を「学習の転移」と呼んでいます。

運動神経がいい子、いわゆる運動感覚に優れた子というのは、むしろ様々な体験を通した知覚運動協応によって構築された「結果の知識」が備わっており、結果として様々な運動技能に対する「学習の転移」が起こりやすいので、いわゆる「あの子は何をやらせてもできるよね」みたいなことが生じるということ。

そのように考えるからこそ「学習の転移」が起こりやすいように、様々な運動体験を刺激としていれていくことが運動学習能力を向上させる一手となると考えています。

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