上腕二頭筋は、烏口突起に起始する短頭と関節上結節に起始する長頭からなり、橈骨粗面に停止します。
上腕二頭筋長頭腱は、肩関節腔内を骨頭上部に沿って走り結節間溝に向かい、結節間溝のトンネルの中を通ります。
上腕二頭筋長頭腱は結節間溝内で水平方向から垂直方向へと方向を変えるというという解剖学的特徴により結節間溝で機械的刺激を受け、磨耗しやすい構造となっていて、腱炎や腱鞘炎、ときには断裂が発生します。
40歳以上になると加齢的変化により腱の変性が生じるため、特に発生頻度が高くなります。
小結節に付着する肩甲下筋、およびその表層腱と線維を交え大結節に付く横上腕靭帯が断裂すると、上腕二頭筋長頭腱が小結節を乗り越え脱臼を起こすこともあります。
発生機序として肩関節外転・外旋運動・仕事やスポーツ活動でこの動作を繰り返すことにより小結節との摩擦による変性が進み発生します。
後は、重量物の挙上によって上腕二頭筋が腱の張力を越えて収縮した時と緊張した上腕二頭筋に対し突然の強い伸張力が加わった際に発生します。
症状としては、断裂音とともに激痛を伴い、腫脹と上腕部に皮下出血斑が出現します。
上腕二頭筋の筋腹が遠位に移動し、腫瘤状に膨隆します。
損傷の初期は疼痛のため屈曲力・握力が低下し、夜間の疼痛も出現しますが、2〜3週間経過すると疼痛は軽減し、筋力低下はある程度回復していることが多いです。
治療としては、症状は時間とともに軽減し、機能障害を残すことも少ないですが、スポーツ活動や上腕を使用することが多い若年者は観血療法を進めるべきです。