体幹機能と運動パフォーマンス | フィジオ福岡 運動科学

近年、体幹の安定性向上により優れた運動パフォーマンスが発揮されると考えられるようになっています。
実際にトレーニングの現場でも体幹トレーニングの重要性は謳われ、研究レベルでも体幹安定性と運動パフォーマンスに関する研究が多く行われています。
これらの研究では、両者間に正の相関関係を認めるものが多く、運動パフォーマンス向上に体幹安定性が一翼を担っていると考えられています。

「グローバル筋」と「ローカル筋」

体幹安定性は骨格・筋・神経系により産生されていて、このうち筋群は「グローバル筋」と「ローカル筋」に分けられ、「グローバル筋」は表在にある大きな体幹筋群、「ローカル筋」は体幹深部の脊椎分節間制御に関与する筋群とされています。
これら筋群の中でも腹横筋は身体運動に先行して活動を開始し、非方向依存性に脊椎剛性を高めるとして重要視されている特殊な筋になります。

これら体幹の筋の働きは、それぞれが体幹安定性のために単独で機能しているのでなく、体幹筋群を全体的に捉えることが重要です。
体幹を構成する様々な筋が相対的に弱い筋を補っている可能性が考えられ、コアのトレーニングに関しても1つ1つの筋の評価よりも、全体としてのコアの機能に着目する必要があると考えられています。

体幹機能は個々ではなく全体に焦点を当てることが重要。

体幹安定性とパフォーマンスでは敏捷性との間に有意な相関関係を認めた報告が多く存在します。
例えば、素早い方向転換には体幹の中央での固定性が重要とされています。
また、野球選手よりも敏捷性が要求されるサッカー選手で体幹機能が高いとの報告もあります。

サッカーやバスケットボールのような敏捷性が要求されるスポーツ選手のトレーニング介入においては、体幹安定性の向上により高い競技能力獲得が期待されると考えることができます。
このような競技の場合でも、先に述べたように体幹トレーニングの方法に関しては、「ローカル筋」と「グローバル筋」を個別に捉えるのではなく、体幹機能全体に焦点を当てることが重要になってきます。

コアにおける「stability機能」と「mobility機能」

体幹筋力の重要性を報告している文献をみると、パフォーマンス能力は体幹部の「stability機能」と「mobility機能」に強く依存するとした報告が多いことに気づきます。
コアの重要性についてはコア・コンディショニング協会が『筋力が身体機能を最大限に高めるための原動力と捉え、特に全ての動きの中心であるコアの筋力を高めることにより、より高いスタビライゼーション能力・コーディネーション能力を獲得しパフォーマンス向上と怪我の予防に寄与する』と定義しているように、その「stability機能」が重要視されているような気がします。

しかしながら、「stability機能」が機能的に働くにはしっかりと動くという「mobility機能」が前提になると思いますし、可動性があるものを安定させる「stability機能」が重要であると思います。
実際にコアの研究において、胸椎の可動性が高い者ほどより負荷の高い腹筋動作が可能となる結果を示した報告もあります。
パフォーマンス向上を達成するためにはコアの筋力を高めるだけではなく、胸椎の可動性を高める必要があるということを示唆しているものです。

「stability機能」と「mobility機能」はどちらも重要ですが、まずは可動性があること、そこを安定させること、安定させた状態で制御して動かせること。
この順番で動きの評価を考えていくのがいいのかと考えています。

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