妊娠中のエクササイズによる血行動態とその影響|フィジオ福岡 妊娠女性のトレーニング生理学

多くの女性がエクササイズやトレーニングを行うようになってきた現代において、昔ながら妊娠女性のエクササイズの生理学的反応として、流産、胎児の奇形、胎児の成長障害、胎児の外傷、早産など妊娠の結果が悪くなると考えられてきました。
しかしながら、このような考え方は文献上妥当性が確認されていないものが多いのが実際です。
そこで今日は妊娠中の運動がどうなのか、生理学的観点からの研究データを考えていきます。

今回のテーマは「妊娠中のエクササイズによる血行動態とその影響」です。

エクササイズによる血行動態の反応、特に内蔵の血流変化により、エクササイズ中に十分な子宮の血流が保たれないかもしれないと考えられてきました。

たしかに子宮の血流が減少すれば、胎児に対する酸素と栄養の補給が減少し、成長と発達を阻害することは予想がつきます。
また、子宮への筋層からの酸素供給が減少することにより、子宮の収縮が刺激され、早産や早期分娩に繋がるということも懸念されてきました。

通常、妊娠していない女性では、荷重運動により内蔵の血流が40~50%程度減少するという報告もあります。
しかしながら、これが妊娠中の女性となると、妊娠中の場合、通常の血液循環量よりも40~50%程度増加する傾向にあり、これが内蔵血流の減少に対する保護的作用となっています。

さらに妊娠前から運動習慣のある妊娠女性は、運動習慣のない妊娠女性群に比べ、荷重運動時の内蔵血流量の減少が20~30%減少傾向にあるという報告もあることから、激しい運動でなければ子宮やその他内臓への血流量がエクササイズにより大きく減少することはないのではないかと考えられます。
またエクササイズ中の子宮胎盤の血流を超音波検査にて評価した研究においても、妊娠女性の運動中の子宮胎盤血流の減少を明らかに示すエビデンスはないとされています。

この超音波研究では、子宮胎盤と同時に、エクササイズ中の臍動脈血流も同様に検査され、同じように血流の減少は見られず、運動による臍動脈の血流減少のエビデンスはないという報告をしています。
また別な視点からの研究では、母親のエクササイズに伴う胎児の心拍数の変化を運動前と運動後でモニタリングした結果、その胎児の心拍数の変化は様々ではあったが、心拍数の変化があったとする研究においても、その変化は一時的なものであり、遷延する胎児への悪影響は認められなかったとして、エクササイズを行っても胎児への十分な血液供給が保たてれいると考えられています。
このように妊娠女性のエクササイズによる血行動態は、研究においては運動を行っても胎児への血液供給は保たれることがわかっています。
確かに運動強度など、リスクを管理する必要はあると思いますが、妊婦だから運動はせずに安静にとは言わなくてもいいのかもしれませんね。

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