股関節唇損傷~発生機序と病態~

サッカーやテニスでは、急な方向転換やストップ動作の際に、股関節の過度な動きが要求されます。関節唇は、過度な動きを要求された際に大腿骨頭と臼蓋に挟み込まれたり、回旋や牽引のストレスを受けて損傷しやすくなります。

トップレベルのテニスプレーヤーでは、その8~27%に骨盤・股関節・鼠径部の損傷を認め、鼠径部痛(グローインペイン)を訴えるアスリートの約25%に関節唇損傷が認められるという報告があります。大腿臼蓋インピンジメント・臼蓋不全・関節包弛緩・関節軟骨摩耗があると関節唇はより損傷されやすくなります。股関節に構造的な異常がなくても、過度なストレスを受けている場合や、筋の機能が低く機能的に関節が不安定な場合は関節唇が損傷されることがあります。関節唇損傷の大半は関節内側の前部や前上部に認められ、過大な股関節外旋ストレスは腸骨大腿靭帯や前方関節包の弛緩を招くとともに、関節唇損傷の主な原因となります。

関節唇損傷には主に4つのタイプがあります。①放射状フラップ損傷:最も一般的なタイプで、関節唇の自由縁の分裂②放射状線維性損傷:関節の退行性変化に関連して生じる自由縁の擦切れ③末梢縦断裂:最も珍しいタイプで、関節唇の末梢側への縦方向損傷④異常移動性損傷:関節唇の分離

また、関節軟骨の変性(変形性関節症)を伴うケースは珍しくありません。股関節痛や内旋・屈曲可動域制限は、軽度から中程度の股関節症の予測因子とされています。

 

関連記事

  1. プロテイン活用法

  2. 五十肩とそのアプローチを考える|フィジオ福岡 五十肩をどう考える

  3. 熱中症

  4. クライオセラピーという選択|フィジオ福岡 コンディショニング科学

  5. 鉄欠乏

  6. 発達における姿勢コントロール|フィジオ福岡 運動発達と姿勢のコントロー…

閉じる