運動と免疫|フィジオ福岡 健康科学

よく「アスリートは風邪を引きやすい」といわれますが、本当にそうなのでしょうか?

実際これは本当です。
適度な運動であれば感染症のリスクは減少するのですが、激しい運動や過酷なトレーニングは逆に感染症を引き起こすという、複数の調査結果が出ています。

体を酷使することで疲労状態にあったり、特に減量が必要な競技種目の場合には、栄養摂取の偏りによって体内の栄養状態が悪かったりすることで、免疫系が働きにくい。

その理由はいくつか考えられますが、その前に私たちの体を守るために働いている免疫機能を見ていきましょう。
免疫とは、体外から入ってきた微生物や異物、あるいは体内に生じた異常物質や老廃物、病的細胞などが悪さをしないように処理する生態防御の働きにことです。

免疫系を構成する細胞は白血球と総称され、食細胞系とリンパ球系とにわけられます。
食細胞はアメーバのように運動し、微生物や異物を細胞内に取り込んで分解する、食作用を専門とする細胞です。
働き方が何かを食べていうように見えるので、食細胞と呼ばれています。
リンパ球系はナチュラルキラー(HK)細胞やTリンパ球(T細胞)、Bリンパ球(B細胞)などがあります。
また免疫系は、異物への反応様式から特異免疫と非特異免疫とにわけられます。

それでは、この免疫機能。アスリートの体ではどのように働いているのでしょう。
激しい運動によって体内では頻繁に筋繊維の破壊が起こるため、アスリートは自分の体をあまり攻撃しない(炎症反応が起きないように)なっています。
その分、病原体が進入してきたときに攻撃する反応も弱くなっています。
つまり、免疫機能が鈍くなっていることが、感染症を引き起こしやすくしているというのです。
また、体を酷使することで疲労状態にあったり、特に減量が必要な競技種目の場合には、栄養摂取の偏りによって体内の栄養状態が悪かったりすることで、免疫系が働きにくいこともあります。
さらには、激しい運動を行うと免疫系の働きを抑制する物質が分泌される事もわかっていて、運動強度や連日のトレーニングで十分に体を休めることができていない場合や、試合前などの精神的なストレスが大きい場合にも免疫の働きに影響があります。

まずは疲労を蓄積させないこと。

では、免疫力の低下を防いで感染症を予防するにはどうしたらいいのか。
それは、誰もが知っていることですが、手洗い・うがいの徹底とマスクの着用が効果的です。
そのほかには、まずは疲労を蓄積させないことです。
オンとオフのメリハリをつけ、休むときにはしっかり休むことが大切です。
そして、十分に睡眠をとり、栄養の偏りをなくしていくこと、これがなければ免疫機能はまったくはたらきません。

なかでも、免疫機能にはタンパク質やビタミンの摂取が重要です。
免疫細胞はタンパク質から作られていますし、病原体と結合することで攻撃する抗体もまた、タンパク質からできています。
またビタミンCやEは体にとって有害な活性酸素を消す作用があります。
活性酸素が過剰生産されると免疫機能も障害を受けるので、それから守る意味で、抗酸化ビタミンであるビタミンCやEをとったほうがいいといえます。
ただし、ビタミンCを過剰に取りすぎると、かえって活性酸素を生み出す素(プロオキシダント)にもなるので、それだけをサプリメントなどから大量にとるのは避けましょう。
そして、体調が悪いときには勇気をもって休みをとる事も大切です。

何度も繰り返すように、運動を繰り返せば、多かれ少なかれ疲労は起こるわけですから、早期復帰やそれ以上の悪化を防ぐためにも体調がすぐれないときには練習を休む勇気を持ちましょう。
試合が近い場合などは、なかなか休めないというジレンマもあるかもしれませんが、そういうときこそしっかし休んだ方が、試合本番でもいつも通りのパフォーマンスを発揮できる可能性が高いのです。

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