筋の拮抗的・共同的中和

運動を円滑に遂行するために骨格筋はそれぞれ主動作筋、共同筋、拮抗筋と役割を持ちます。一般にはひとつの運動に対して主動作筋、共同筋、拮抗筋は別々の筋が対応しますが、中には共同的かつ拮抗的に働くこともあります。これは主に「中和作用」として働きます。

「中和作用」を考慮する

上腕二頭筋による前腕の回外運動について考えてみます。上腕二頭筋は上腕骨や肘関節の屈筋として働きますが、前腕の回外にも強力に関与します。通常、日常生活において起こる前腕の回外動作では上腕二頭筋はあまり関与することがありませんが、例えばドライバーでネジを回すなどの強い力が要求されるとき二頭筋が主として働きます。上腕二頭筋の回外効率を高めるためには肘屈曲90°の肢位である必要があります。実際にネジを回す場面を想像してみると、無意識的に肘関節が90°に屈曲していることが分かります。このとき、上腕三頭筋による「中和作用」が働いています。上腕三頭筋は肘関節の伸展筋ですが、上腕二頭筋による肘や肩の屈曲作用に対して拮抗的に働くことで中和し、さらにそれが上腕二頭筋の回外効率高めるというを補助していることになります。

筋の相互システム

さらにデザイン上でも優れた関係になっています。上腕三頭筋の付着部は尺骨であるため、橈骨の運動を阻害することはありません。以前、お話した、腹斜筋群に対する体幹の伸筋群もこの中和作用が働いています。腹斜筋群の屈曲傾向を体幹の伸筋群が中和することで、効率的な体幹の回旋筋として働くというシステムです。このように、骨格筋はさまざまな形で関係しあい、運動を円滑に行っています。このような関係は、二関節筋と長さ-張力関係を考慮するとさらに分かりやすいと思います。

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