手の開き(指の伸展)と筋の協調

手の開きは、つかみの準備のために行われます。この際MPとIP関節を通る指の完全伸展に対する最大の抵抗は重力ではなく、外在屈筋の伸展による粘弾性抵抗によるものと言われています。この筋内で発生する他動的反動力が、リラックスした手の部分的屈曲位のおもな原因となります。

指伸筋と内在筋

おもな指の伸筋は指伸筋と内在筋、とくに虫様筋と骨間筋となります。一般に、指伸展中の骨間筋より、虫様筋のほうが筋電学的活動において高いレベルにあります。指の内在筋は、IP関節の伸展の仕組みに直接的効果と間接的効果をもたらします。直接的効果は、伸展機構を介して近位へ引くことでの間接的効果はMP関節における屈曲トルクの産生です。屈曲トルクは、MP関節の過伸展により、指伸筋の収縮力の多くが早々に分散されることを妨げます。MP関節の過伸展が抑止されてはじめて、指伸筋はIP関節を完全伸展する伸展機構を介して、IP関節伸展を効果的に行うことが可能となります。

指伸筋と指の内在筋は、指の伸展のため相乗して協働し、指伸筋と内在筋は指完全伸展を行うために協調する必要があります。逆説的に、MP関節を通る指伸筋と内在筋の反対作用が、IP関節における協働的伸展を可能にします。この協調関係は、尺骨神経損傷の患者において特に観察されます。内側2本の内在筋による自動的抵抗がなければ、指伸筋の活動は特徴的な鉤爪手変形を生じ、MP関節は過伸展、IP関節は部分的に屈曲します。内在筋の活動が低下しているため、これはよく内在筋マイナス肢位とよばれます。

治療介入形態

内在筋によるMP関節の屈曲トルクなしでは、指伸筋はMP関節の過伸展を行えるだけとなります。この肢位は深指屈筋を伸長し、よってさらにIP関節の伸展を困難とさせます。この肢位に対して、徒手的にMP関節に屈曲トルクを与えると、指伸筋の収縮によりIP関節は完全に伸展できます。MP関節を過伸展しないようにブロックすると、深指屈筋を弛緩させ、IP関節の伸展に対する筋の他動的抵抗を最小にします。MP関節過伸展のブロックは、指内在筋麻痺後の治療介入形態の1つとなります。

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