運動とBDNFの関係性

年をとった脳を健やかに保つのに一番効果的な方法って知ってますか?意外なんですが、答えは運動です。ニューロンがきちんと仕事をするには多くの手助けが必要となります。ですが、循環系が老化するという問題が起こると、脳へ酸素やグルコースを運ぶ血液の供給が減るおそれがあります。だから、心拍数を上げるような運動を定期的に行うことは年をとっても認知能力を高める、唯一にして最も有効な方法になります。

身体を鍛え、脳を鍛える

一生ずっと身体を動かしてきたような高齢者は、座っていることが多かった同年齢の人たちよりも実行機能を必要とする作業能力がずっと高かったという研究もあります。運動を行うとなぜ脳の機能が高くなるのか?その効果に寄与しそうなことを考えると以下のようなものが考えれます。

人間の場合、体を鍛える訓練は加齢にともなう大脳皮質の縮小を遅らせます。動物実験においては、運動により脳の毛細血管の数が増え、ニューロンへの酸素やグルコースの供給量が増えるという研究結果も報告されています。他にも、運動は軸索とシナプスの成長を促す成長因子である多様なタンパク質の放出を引き起こし、シナプス可逆性を高めて海馬などのニューロンの新生も起こすという研究もあります。運動習慣がある人は、してない人に比べると70代でアルツハイマー病にかかるリスクが3分の1になるともいわれています。この運動とアルツハイマー病の関係性については、60代で運動をはじめてもそのリスクは半分になるというデータもあり、いかに運動が脳に大事であるかを物語ってます。

脳由来神経栄養因子「BDNF」

運動は、神経栄養因子の増加をコードする遺伝子の発現増加をもたらします。動物実験において、自発的に滑車を走ったラットはそうでないラットに比べ、脳由来神経栄養因子(Brain Derived Neurotrophic Factor : BDNF)が増加していることが分かりました。BDNFは、神経細胞の健康を増進し、新たなシナプスの形成や神経細胞間の連結を保持し、脳組織の厚さや結合性を増加させます。このBDNFは海馬においてその増加が特に認められており、運動による認知機能の向上に寄与している可能性が示唆されます。

また、有酸素性能力が高い中高年者では、脳の白質、灰白質における組織の密度に正の相関関係があり、有酸素性能力が優れている人の脳組織はより密度が高く、実行や思考などの働きを担う前頭葉の重要な領域において、加齢に伴う組織の減少が抑制されていることがわかりました。前頭葉は加齢による機能の低下が著しい領域であり、運動はこの低下に対する予防策として重要であると思われます。つまり、運動は脳や精神の若さを維持する働きをもつと考えることができるわけです。

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