大脳半球の特徴と言語

ヒトの大脳の左右の半球はそれぞれ右脳と左脳とよばれ、右半球は音楽、イメージ、経験、直感的な認識、いわゆる創造性を司り、左半球は知性、言語、文字など分析的な側面をもちます。脳からの指令は交叉支配により身体左側の動きには右半球が右側の動きには左半球が対応しています。これはなにか考え事をしているときの首をかしげる動作、首をかたむける動作とも呼応しているといいます。すなわち数学や言語など理論的な思考をしているときは左脳を働かせているために右にかたむけ、芸術的な思考をしているときは右脳を働かせているために左に、無意識にかたむけている傾向にあるとされているのです。ヒトによりこの傾向は様々ですから普段から左にかたむけて考え事をしている人、右にかたむけて考え事をしている人、こういった方達の性格や思考の傾向を観察してみると面白いかもしれないです。

ヒトの大脳皮質に限局している機能「言語」

また、ヒトの大脳皮質に限局している機能の1つに一連の言語に関連した機能があります。つまり話を理解し、書かれた言葉を理解し、言葉や文章で観念を表現するという機能です。こうしたヒトの言語機能が左右いずれかの片半球に依存しているということははっきりしています。この半球はカテゴリー化とシンボル化に関与しており、しばしば優位半球とよばれ、通常は左半球がそれにあたります。しかし、反対側の半球が単に発達の程度が遅いとか劣っているというわけではなく、時空間的な関係に領域上の分化があることを表しています。たとえば、形態から物体を同定したり、音楽のテーマを認識するのはこの半球の機能です。また、この半球は顔の認識でも主要な役割を果たしています。結果として、半球優位、あるいは優位・劣位半球という概念は半球の相補的な特性という概念に置き換えられました。

すなわち、1つは逐次解析処理(カテゴリー化)に関係した半球で、他方は視空間(表現化)に関係した半球という概念です。カテゴリー化の半球は言語機能に関係していますが、この半球の特異性はサルでもみられるので、この半球の特殊化は言語の発達に先立つものと考えられます。カテゴリー化の半球の障害は言語障害を引き起こしますが、表現化の半球の障害では言語の障害は起きません。そのかわりに、触覚によって物体を認知することの触覚によって物体を認知することの障害、立体覚失認やその他の失認が起こります。失認という言葉はある種の感覚そのものに障害がないにも関わらず、その感覚情報によって物体が認識できない症状を指します。このような症状が生じる障害部位は一般に頭頂葉になります。とくに障害が表現化の半球側で、頭頂葉の後方部で側頭葉に近い下頭頂葉が障害されると半側空間無視が生じます。この障害のある患者は、基本的な視覚、聴覚、体性感覚には明白な障害はありませんが、障害と反対側の体への刺激や、そのまわりの空間の刺激を無視するようになります。その結果、自分の体の半分を手入れすることができなくなり、極端な例では、顔の半分だけヒゲを剃る、服を片側だけ正しく着る、ページの半分だけを読むといったことが起こります。

半球特異性と右利き、左利き

半球特異性は皮質の他の領域でも同様であり、カテゴリー化の脳が障害されると、障害があることに悩まされ、時にはうつ状態になりますが、表現化の半球の障害では時に障害を気にせず、多幸感さえ持っています。大脳半球の特殊化は利き手と関係しています。全人口の91%の人は右利きですが、そのうち96%の人は左半球が優位半球つまりカテゴリー化の脳で、残りの4%は右半球が優位半球です。一方、左利きの人のおよそ15%が右半球がカテゴリー化の脳で、15%は左右どちらかはっきりせず、残りの70%では左半球がカテゴリー化の脳であると言われています。興味深いことに、失読症のような、読みを学習することの障害は、左利きの人では右利きの人の12倍も多く出現します。これはおそらく、左半球に基礎的な異常があるために発達の早い段階で利き手が右手にスイッチしたためであると考えられます。しかし、左利きの人たちの空間的な能力は平均以上で、芸術家、音楽家そして数学者には左利きの人たちの割合が高く、理由ははっきりしませんが、左利きの人たちは右利きの比べて僅かですが有意に寿命が短いとされています。

 

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