筋膜の多機能性

筋肉は筋束、筋線維、筋細線維、筋フィラメントに階層化されています。筋細胞である筋線維以上の階層には各々の筋膜が筋上膜、筋周膜、筋内膜と対応して覆っています。その各々の筋膜は互いに連続性を有していて3次元的なネットワーク構造をとり、各筋肉の形態を支えるのに役立っています。筋肉同士も互いに筋膜によって連続しているため、筋膜を含む膜組織は身体の筋肉全体を浅層から深層まで、頭の先端からつま先までを連続させる媒体となって います。また血管や神経が筋膜の中を走行していることも臨床上非常に重要なポイントになります。

筋肉は筋線維と筋膜の集合体と理解できますが、各々に異なる役割が与えられています。筋線維は神経系制御を介した収縮と弛緩という生理的な役割を担う一方で、筋線維で発生した力をまとめ、そして伝達するという物理的な役割も担っています。どちらの役割が不十分になっても筋肉はその活動に支障をきたすことになりますが、筋膜リリースは筋活動に対して筋膜の側面からアプローチしていこうという方法のことをいいます。

力をまとめて、伝達する筋膜

筋膜は結合組織に属し、生体の中で発生した力をまとめて、伝達する役割を担っているため、強さとある程度の弾力性が要求されます。その中でも、強さを保証するのがコラーゲン線維です。コラーゲンは結合組織の主成分動物タンパクの約25%を占めるタンパク質です。コラーゲン分子は共有結合によって強固な結合がなされ、密なネットワークを形成します。一方、ある程度の弾性力を保証するのが弾性線維のエラスチンです。エラスチンはコラーゲンと併走することになりますが、コラーゲンに比べて細くそのネットワークも疎になります。これら2種類の線維は器官によって様々な配分率をとりますが、それらの線維を定着させる場となって結合組織のショックアブソーバーともなっているのがゲル状を呈する細胞間物質です。これは基質となるプロテオグリカンと、潤滑性と粘稠度を有しコラーゲン線維や筋線維が円滑に滑りあえるように働くヒアルロン酸から構成されています。細胞間物質では末梢の血管の透過性の変化によってゲルの密度が変化し、コラーゲンの結合が変化するとされています。また細胞間物質は食細胞などがあるため、免疫作用などを行う場にもなっています。このように強い支持性とある程度の弾力性を有し、一方ではショックアブソーバーの機能をもつ、時には免疫機構としての働きを行っているのが筋膜という多機能性を備えた器官になります。

「コラーゲン線維」と「エラスチン線維」

筋膜は、全身の筋のほか、骨や心臓、脳などの臓器をすべて包み込んでいる膜のことで、全身をくまなく覆っていることから「第2の骨格」とも呼ばれています。筋肉を正しく動かすためには、この筋膜が柔軟に働くことが大切です。筋のインバランスだけではなく、静止時の筋膜配列のインバランスや、筋の硬さが慢性化した場合に発生する筋膜の機能異常も不良姿勢の大きな問題になります。筋膜の水溶液状の間質液、つまり基質の中の「コラーゲン線維」と「エラスチン線維」、さらにはヒアルロン酸でできています。

筋膜の異常機能とは、筋膜を形成するコラーゲン線維とエラスチン線維が密集して高密度化を生じ、基質が脱水を起こして粘り気を増し分散することで、筋膜の滑りを助けていたヒアルロン酸が凝集化して滑りが悪くなることです。エラスチン線維は、ゴムのような弾性に富んだ性質です。コラーゲン線維は弾性には乏しいですが、張力に対しては強い抵抗性を示します。コラーゲン線維は通常、波状に縮んだ状態にあります。外部から力が加わると、この波状の部分が直線状に変化することで長さが変化しますが、線維自体が伸びることはありません。

筋膜の柔らかさを保つ

逆に弾性に富んだエラスチン線維は、線維自体が伸びやすい性質で、最大2.5倍の長さまで伸びます。これらの性質は、姿勢をコントロールする上で重要な要素となっています。筋膜がよじれたり、癒着したりすると、筋膜そのものだけではなく、上にある皮膚や下にある筋肉も動きづらくなります。そのため、良い姿勢や動作がとりづらくなり、腰痛や肩こりの原因となるだけではなく、そこを通る血管やリンパ、神経も影響を受け、痛みやしびれが生じることもあります。筋を正しく動かすためには、それを包み込む筋膜を柔軟に保つことが大切なのです。

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