ミラーセラピーとリハビリテーション

ヒトの大脳一次運動野は、単純運動の繰り返しや複雑技能を獲得するための練習によって、顕著な再組織化がみられます。また皮質レベルでの変化以外にも、ニューロン間の興奮性・抑制性作用の変化など、脳機能の可塑的変化が起こることが報告されています。例えば、脳卒中発症後には、脳組織自体が再組織化を開始しますが、その後慢性期へと経過するに伴い、自発的神経可塑的変化の発現の可能性が低くなります。

可塑的変化が誘発され運動機能が改善

しかし近年、高強度高頻度の運動練習、または非侵襲的大脳皮質刺激により一次運動野領域に可塑的変化が誘発された場合、慢性期脳卒中患者においても運動機能の回復が起こり得ることが報告されています。これは、運動介入などによるリハビリテーションを実践することで脳の可塑的変化を誘発することができれば、機能回復が難しいと考えられていた慢性期の患者においても運動機能の改善が獲得される可能性を示唆しています。


脳卒中後片麻痺患者の運動機能改善を目的としたリハビリテーションとして、近年、鏡像を利用したミラーセラピーが提案され、臨床での応用が行われています。これまでの研究から、ミラーセラピーを行うことにより、運動機能、脳機能の改善に作用することが分かっています。特に、一次運動野の複雑で精緻な動作を制御する領域への関与が示唆されます。

ミラーセラピーの有効性

このミラーセラピーは、片麻痺患者だけでなく、健常者においても同様の効果があると考えられています。健常成人を対象にした研究で、利き手へのミラーセラピーを行うことで、非利き手の運動機能向上やそれを制御する一次運動野の興奮増大が見られました。未だ、ミラーセラピーによる可塑的変化の機序は明らかでないことがありますが、効果発現機序としてミラーニューロンの活性化や運動イメージの強化などが有力であるとされています。

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