効率的な動員パターン

共同筋における効率的な動員パターンに変化が起こると、共同筋のなかのあるひとつの筋がその他と比較して優勢になります。臨床上よく認められる変化としては、同じ方向への力の組み合わせのうちのひとつの筋だけしか使用しなかったり、または、拮抗筋とバランスをとる共同筋のうちただひとつの筋しか主に使用しなかったりすることであります。その結果、優位な共同筋の方向への運動が生じます。例えば、僧帽筋上位繊維の優位性について考えてみると、僧帽筋上部繊維は、肩甲骨をコントロールするために肩甲骨の上部にある筋群のなかで重要な部分であり、僧帽筋下部繊維と比較すると上部繊維のほうか優位となることがあります。

動員パターンを変化・改善させる

僧帽筋は、肩甲骨を内転し上方回旋しますが、その際上部繊維は肩甲帯を挙上し下部繊維は下方へ抑制されます。過度の肩甲帯の挙上は僧帽筋上部繊維が優位となり、下部繊維がこれを抑制することができなくなった状態です。この過度な肩甲帯挙上は筋力の問題というよりも、習慣からきているといえます。検査では、僧帽筋下部繊維の筋力に低下が認められるかもしれませんが、これらの患者に僧帽筋下部繊維の筋力強化運動を行うだけでは不十分になります。よくよく考えると、筋の動員と筋の収縮能力とは関連があると考えられますが、筋力を強化することは必ずしも動員パターンを変化させることにはならないことは臨床上よくあることでもあります。この場合、動員パターンを変化・改善させることのほうが、筋の収縮能力と筋力を変化させ正常な運動を再獲得することに役立つともいえるでしょう。

予測制御(フィードフォワード制御)と反応制御(フィードバック制御)

スポーツにはケガはつきものです。なぜケガをしてしまったのか原因を考え改善していく必要があります。スポーツ外傷の予防や再発防止を目的としたエクササイズを作成する場合、スポーツ動作中に生じる不意な外力への反応を改善するためには予測制御(フィードフォワード制御)が重要で、反応制御(フィードバック制御)で対処するには遅すぎるといわれています。フィードバックとは知覚された諸情報を統合し、進行している運動を修正して正しい運動に導く制御様式で、フィードフォワードは考えられる事象を予測し、フィードバック情報を待たずに運動を制御します。不意な外乱が起きたとき筋肉の反応速度では関節を守ることは困難になります。

例えば、膝関節に不意な外反ストレスが生じた際筋収縮の開始は膝内側側副靭帯が断裂したあとに起こるのです。非予測的外乱刺激に対応するためには、たとえば足関節内反捻挫に対するひ骨筋エクササイズのような短関節運動だけが必要なわけではありません。不意な外乱刺激を想定した多関節運動や多重課題を繰り返し練習することで、運動前野や補足運動野といった運動プログラム中枢における運動パターンの構築を促通し、予測性を増して非予測性を少なくすることが大切になります。

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