滑膜性の連結と滑液
滑膜性の連結(狭義の関節)は両骨間に滑液を満たす関節腔のある連結で、一般に可動性が大きいといわれています。いわゆる関節は関節面、関節体、関節包および関節体の間にある関節腔。必要に応じて補強靱帯、関節円板、関節唇および滑液包もみられます。2つの関節体からなる関節では、動く方の関節体を可動部、比較的静止している方を基部といいます。関節腔の内面に滑膜と呼ばれる組織があります。(恥骨結合のように骨間組織に空隙を含み得る連結でも滑膜を備えないものはこの分類には入らない)そして滑膜性関節は連結系の中で運動性が最も大きくなります。
滑膜性連結
関節の語を狭義に用いるとき、しばしば滑膜性の連結のみを指します。関節は老人性変化を受け、血管のない関節軟骨はその弾力性を失ってしまいます。老人では軟骨におおわれた関節面に障害や退縮がみられます。また軟骨縁には増殖が起こってくる場合もあります。この軟骨の増殖は後に遊走してきた骨芽細胞によって骨に改造されることもあり、この骨が運動を制限するように作用するこのような過程は椎骨の小さな関節で起こりやすいといわれています。しかし関節の変化はその関節が過度の働きを強いられるときには、若年者においても現れることがあります。臨床上、これらすべての可動関節の運動範囲をよく確かめることが大切です。関節をなす骨が正常な位置からはずれているとき、その関節は脱臼(dislocate)しています。
可動関節のうちのあるものは、靱帯による補強が弱いか、関節面の形が悪いか、あるいは筋による補強がないために、とくに脱臼しやすいと報告されています。肩関節、顎関節、肩鎖関節はその好例です。股関節の脱臼は通常は先天的異常によるもので、正常状態では大腿骨頭を定位置に保持するはずの寛骨臼が不十分な発育を示しています。膝関節のごとく体重の大部分を支える関節の内部に軟骨性の円板が存在する場合には、スポーツを行うときのその円板が損傷を受けやすくなります。このように各関節の特徴を把握していくことは非常に重要です。
滑膜関節と滑液の機能
滑液は滑膜関節のほか、滑液包や腱鞘に存在します。滑膜関節における滑液は透明、もしくは淡い黄色で粘性があり、安静時には多少アルカリ性を示します。この滑液は、関節腔を満たしており、その量はそれぞれの関節や人種によって異なるといわれています。特に人間の関節では滑液の量が少なく、膝関節で平均1.1mlほどしかないといわれています。滑液は滑膜内脈絡叢から濾過された血漿成分とB型滑膜細胞が産出したムチン(ヒアルロン酸-タンパク質複合体)が合わさった液体で、その特徴は粘性と弾性をもつことです。この特徴的な粘性はヒアルロン酸の性質そのものであり、剪断速度が上がるとその粘度を減じ、剪断速度が下がると高い粘性を示すという性質をもちます。この結果、ゆっくりとした動きでは非常に強い膜面を作ることで重力に耐えうる許容力が最大となります。
しかしながら、関節炎をきたした関節における滑液ではこういった特徴は一様に低下してしまいます。粘性は希釈度の変化にも敏感で、温度やphの上昇でも低下します。また弾性は速度がが上がると増加しますが、これはヒアルロン酸分子の鎖状重合体という構造特性によってもたらされるものであると考えられています。滑液の機能には、①関節表面にph変動の少ない水分環境を供給すること、②関節軟骨や半月などへの栄養供給と代謝産物および摩擦で発生する熱の搬出、③潤滑剤としての役割、④細胞侵食の修復、などの役割を担っています。
この記事へのコメントはありません。