ACL損傷と体幹機能

スポーツ傷害の中で膝前十字靭帯(ACL)損傷は重篤な外傷であり,受傷後は長期離脱を余儀なくされるため,その予防法が注目されています。

受傷機転は、ジャンプの着地や切り返し動作での接地局面が多いとされています。発症要因には膝外反角度の増大(knee-in&toe–out)、過回内足、股関節外転筋力の低下、性ホルモン動態などが影響していることが明らかにされていますが、近年では体幹安定性の重要性が報告されています。

ACL損傷と体幹機能

ある研究では、ACL損傷など膝関節外傷を受傷した者は受傷しなかった者よりも体幹安定性が低かったことを報告しています。また、ACL損傷の受傷機転に多いジャンプ着地動作では、足部の接地前に腹横筋が活動し体幹安定性を高める「feedforward」作用が働くことが報告されていることは有名です。これらの研究結果からもスポーツ現場ではACL損傷予防に対して体幹安定性を高めるためのトレーニングが盛んに行われているのが現状です。特に、体幹安定性の制御には体幹深部筋(腹横筋や多裂筋など)を含めた体幹筋の共同収縮が重要であることが明らかにされていることから、体幹筋群の共同収縮を促進させるエクササイズが推奨されています。

腹腔内圧(IAP)の腰部を保護する機能

人は立位姿勢において加わる身体長軸方向の負荷に対して、骨格を柱のように配置することで身体の形状を保護しています。この際、骨格にはその軸方向の圧縮負荷が加わります。腰部の骨格である腰椎構造体は、立位姿勢の際に加わる軸圧負荷に対して腰部の形状を維持する強度をもっていないのが特徴です。そのため、人が姿勢維持を行うには、他の組織によって腰部の形状が保護される必要性があります。

その保護がどう行われているのか?

これまでは、体幹筋群の活動が腰椎構造体を両側より牽引することで、腰部の保護が行われると考えられてきました。しかしながら、多くの身体活動で身体に長軸負荷が加わる人にとって、これらの張力は腰椎構造体への軸圧負荷を増大させることで椎間板へ慢性的で大きな力学的ストレスを加え、腰痛の発生リスクを増大させることがわかってきました。そこで近年では、腹腔内圧(IAP)の腰部を保護する機能が注目されています。

IAP は身体に大きな外力が加わった際に大きく上昇するため、腰部保護に貢献しているものと考えられています。IAP は身体加わる長軸負荷に対して、圧の柱として胸郭―骨盤間を支えることで、腰椎構造体への軸圧負荷を減少させ、腰痛発生のリスクを軽減しているといわれます。IAPを高くするために、どうコアをトレーニングしていくのかというのは非常に大事なポイントになります!

 

 

 

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