肥満と摂食行動

最近、多くの人は自分を太りすぎていると感じており、巷には痩身法に関する情報があふれています。中には医学的根拠がなく、むしろ体にとって害になると思われる痩身法もあります。野生動物は必要なだけの摂食をしますが、人間の摂食行動は、嗜好や自己の価値観、心理的・社会的要因が関係し、ときには必要以上の摂食をすることで肥満になったり、またときには健康の維持に必要な摂食をしなくなる、いわゆる拒食に陥ることが知られています。このような傾向が極端な場合、摂食行動異常といいます。

摂食行動パターンの異常とは

摂食行動異常の原因の1つに摂食行動パターンの異常があります。肥満者は一般に食物摂取量が多く、摂食回数も多い傾向にあります。1回の食事だけを大食したり、夜食の習慣があったりと、絶対的過食の傾向にあります。また様々な心理的ストレス条件下におかれると、代理行動として過食を求めることがあります。

人は嫌なことやストレスがあると食べて忘れようとすることがありますが、食べることによりエンドルフィンなどの神経伝達物質が分泌され、そういった不安感が和らげられるからになります。この場合、空腹であるから食べるのではなく、嫌なことやストレスから逃れるための摂食であるため、満腹感は生じません。

この状態を代理摂食と言いますが、この代理摂食を改善するには摂食行動そのものよりも代理摂食を作りだした環境を改善するほかなりません。食べ過ぎは肥満のもとと言いますが、食べ過ぎを起こしている環境を改善するのがまず先決ではないでしょうか。

摂食行動は視床下部を中心に制御される。

摂食行動は視床下部を中心に、大脳皮質から脊髄までの神経ネットワークにより制御されています。その中核にはニューロペプチドY産生細胞に代表される摂食行動を促進する神経細胞とPOMC産生細胞に代表される摂食行動を抑制する神経細胞が存在します。グルコース、コレシストキニン、レプチンなどがこの神経ネットワークを介して、摂食行動の開始と終止、一日の摂食量、短期的・長期的な体重の変動を制御しています。摂食行動に関わる神経核の中で視床下部の弓状核が特に摂食行動制御も中心と考えられています。

弓状核への主な入力は室傍核、内側視索前野、背内側核などがあり、出力も室傍核、内側視索前野、背内側核に多くあります。弓状核には摂食行動を促進をするニューロペプチドYを産生する神経細胞と、摂食行動を抑制するα-メラノサイト刺激ホルモンを産生する細胞が存在します。これらに加えて摂食行動抑制作用をしめすガラニン様ペプチドは視床下部では弓状核のみにしか発現しません。また、弓状核はレプチン受容体が最も強く発現している部位になります。

この他、大脳の島皮質、眼窩前頭皮質、側坐核で摂食行動の促進、特に報酬的側面に基づいた摂食行動の促進に考えられます。摂食行動の関連は脳の全域にわたっていますが、その中枢は視床下部の弓状核、室傍核と考えて良さそうです。

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