筋のガーディングと頸部損傷

筋のガーディングとは、痛み刺激に反応する筋の持続的収縮であり、防御的に体が過度に動くのを防ぐためのサインだと言われています。痛みは痛みの受容器が分布している組織からから生じますが、筋のガーディングは皮膚や体表粘膜や関節、靭帯、骨膜などの筋以外の組織からある場合を言います。

防御的収縮である筋のガーディング

第1次の痛みの原因としては、筋以外の組織、筋の直下の組織、あるいは関連痛である場合が多いです。寝違えで頸が回らないなどはこのいい例であるでしょう。寝違えの原因は、椎間関節に正常に存在するメニスクス様構造物が関節面によって絞扼される(メニスクス絞扼論)と説明されてきましたが、その他にもメニスクス様構造物以外の構造物の絞扼や急性の椎間板の圧迫力でも生じることが報告されています。ここでいうメニスクスとは半月・半月板みたいなもの。これが絞扼の一つの原因物質になって痛みが起こり、筋の緊張が強くなるという訳です。この原因が取り除かれれば、防御的収縮である筋のガーディングは軽減することになります。

交通事故による鞭打ち損傷

交通事故による鞭打ち損傷において、特に損傷が生じやすい部位は頸椎でも軟部組織だと言われています。頸追過伸展による鞭打ち損傷は、頸椎過屈曲による鞭打ち損傷よりも一般に軟部組織により大きな伸長が加わります。この過伸展は大きな可動域をもたらし、頭頸部屈曲頭頸部屈筋、頚部内臓、その他前方に存在する結合組織を相当な力で強く引っ張ると同時に、頸椎椎間関節や頸椎後部に過度な圧迫を加えます。

逆に、最大屈曲は、顎が胸部にぶつかることで部分的にブロックされます。しかし、通常はほとんどの車に装備されているヘッドレストによって頭部が補助されることで衝突による過伸展は制限され、損傷は軽減されます。

頸部の過伸展損傷

過伸展損傷は、自動車の後方衝突により生じるものがほとんどであると言われています。衝突と同時に、頭頸部は急激に引っ込み、その後長く、過伸展にさらされます。短い引き込み期は普通、頭蓋骨がヘッドレストにあたる前に終わります。頸椎中・下位の前縦靭帯は、この保護されていない時期に特に損傷されやすいと考えられています。翼状靭帯は、後方衝突の長く過伸展される時期、とくに衝突の瞬間に頭部が回転するときに特に損傷されます。さらに、鞭打ちによる強い過伸展は屈筋、特に頸長筋と頭長筋に過度の伸長を与えることが研究で示されています。

ある研究では、組織損傷を起こしうるレベルの伸長が頸長筋で計測されています。過伸展損傷を受けた人ではしばしば、頸長筋部に明らかな圧痛と防御的スパズムが認められます。頸長筋のスパズムは、正常な前弯を消失した過剰な頸椎直立化を起こしやすく、痛みがある人は肩をすくめ僧帽筋上部線維によって起こる動作が困難となります。頸長筋と他の屈筋が痛みのために十分に収縮できない場合、僧帽筋上部線維は頸部の安定した付着を得られないため、肩甲帯の有効な挙上筋となりえません。こうして機能が損なわれていくことになるのです。

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