記憶の固定と睡眠

長い間、睡眠・記憶・学習は深く関連していることは知られています。ハエからヒトに至るほとんどの動物は、睡眠を奪われると記憶に問題が生じます。
また研究により、“記憶の固定”というプロセスである短期的な記憶を長期的な記憶に変換するためには、睡眠が重要であることがわかっています。

睡眠を促進するメカニズム

ここでのポイントは、睡眠を促進するメカニズムが記憶もまた作るのか、それとも2つの異なるプロセスが働き合っているのか、ということ。

つまり、脳が静かな時、つまり睡眠中にニューロンが働くことができるから、記憶が作られるのか、それとも記憶ニューロンが私たちを眠らせているのか?ということが議論されてきました。
この問題にある研究結果がひとつと答えを提起しました。

研究チームはショウジョウバエの記憶固定部であるドーザル・ペアード・メディアル (DPM)細胞を検討したところ、DPM細胞が活性化されるとハエはよく眠り、非活性化されると、飛び続けることを初めて観察したのです。

記憶固定部

この記憶固定部は、一度短期記憶を長期に変換し始めると、覚醒を阻害する部分です。
これは全て、ヒトの記憶が保存される海馬に似たキノコ体と呼ばれるショウジョウバエの脳の部位で行われます。
つまり、記憶と学習を担うキノコ体の部位は、ショウジョウバエが目を覚ます手助けをしていることが証明されたのです。

研究責任者は「キノコ体のその部位が、“目を覚ましてこれを覚えろ”と言っているようなものである。その後しばらくして、DPM細胞がその部位を抑制する信号を出し始め、“このことを覚えておきたいなら、寝た方が良い”と言うのである」と解説しています。
ショウジョウバエで睡眠と記憶がいかに簡単なシステムで関連しているかを理解することで、科学者が人間の脳の秘密を解明するのに役立つと考えられます。

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