下行性疼痛抑制系とは

アメリカの神経解剖学者のAllan Basbaumと、神経生理学者のHoward Fieldsは1979年に下行性疼痛抑制系を発見しました。
脊髄後角細胞侵害受容ニューロンに対する下行性疼痛抑制系の主要なものは、セロトニンを介した抑制系とノルアドレナリン系を介した抑制系があります。
セロトニン系は、延髄大縫線核を介して抑制する系であり、ノルアドレナリン系は青斑核を介した抑制系です。

下行性疼痛抑制系の起始核

下行性疼痛抑制系の起始核は中脳中心灰白質です。
これは中脳水道を取り囲む領域で、比較的小型の細胞が密に分布しています。

また、さまざまな機能を持つニューロンが長軸方向に沿って円柱状に排列しているため、下行性疼痛抑制系の起始核だけではなく、さまざまな本能行動、情動行動、自律性機能に深く関わっています。
下行性疼痛抑制系に関わる主要な入力は、視床下部の弓状核、扁桃体中心核からなりますが、他にも、視床束傍核、前頭皮質、島皮質、網様体、青斑核など脳幹のさまざまな領域からの求心性線維を受けています。

青斑核

青斑核は、橋網様体に左右1対あるノルアドレナリンを含有する最大の細胞群です。
青斑核は意識の水準の維持、覚醒のコントロール、脊髄への投射を介した下行性の疼痛抑制にも関与しています。
ノルアドレナリン神経系のA6は橋青斑核にあり、脳幹のA5〜A7もノルアドレナリンを介した下行性疼痛抑制系の起始核です。
A5〜A7のノルアドレナリン神経を刺激すると、脊髄後角侵害受容ニューロンの活動が抑制されること、アドレナリンα2受容体作動薬であるクロニジンを脊髄の硬膜外に注入すると除痛が得られることから、これらの鎮痛作用はノルアドレナリンを介した抑制であることが分かりました。

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