大脳皮質運動関連領野と歩行

歩行運動を含めた運動の発現・実行とのかかわりで重要なのは前頭葉です。このことは19世紀後半にすでに実験的に示されていました。代表的なものはドイツのFritschとHitzig(1870)によるイヌの実験で、前頭葉大脳皮質を電気刺激した際に刺激と反対側の骨格筋に収縮が生じたというものです。
その後も、皮質の部分的摘出に伴う麻痺の発現、戦争により負傷した兵士の観察やてんかん患者の脳への電気刺激の効果から、大脳皮質に運動に関連する領域が存在することが一般的に受け入れられるようになりました。
その後のサルを対象として神経解剖・生理学的研究から、こららの領域はさらに一次運動野(primary motor cortex ; M1)、補足運動野(supplementary motor area ; SMA)、運動前野(premotor cortex ; PM)、帯状皮質運動野(cingulate motor area ; CMA)などと細分化され、運動の実行と調節に深く関与することから、皮質運動関連領野と総称されます。

高次運動野

これら領域は相互連絡を有するだけではなく、前頭前野や頭頂連合野などからも強い入力を受けています。また、M1以外の脳領域は高次運動野ともよばれます。

皮質関連領野に始まる代表的な遠心路に、脊髄へ直接投射する皮質脊髄路(錐体路)と脳幹網様体に投射する皮質網様体投射とがあります。

前者の起始細胞(錐体細胞)は一次運動野に多く分布し、後者のそれは主にSMAやPMに存在します。

脳幹網様体から脊髄への情報伝達は網様体脊髄路を介して行われます。
したがって、皮質運動野からの下行性シグナルは直接路と、皮質-網様体-脊髄という間接的な経路の両者を介して脊髄神経機構に働きかけることが可能になります。

肢運動と立位歩行時の姿勢の制御

上位神経機構に起始を有し、運動情報を脊髄神経機構に伝達する下行路は腹内側系と背外側系の2つに大別され、前者には網様体脊髄路と前庭脊髄路が、後者には皮質脊髄路と赤核脊髄路が含まれ、それぞれの系が上位神経機構から脊髄神経機構への伝達を担います。
これらの脊髄下行路の中で皮質脊髄路だけが、霊長類以降の動物で脊髄運動細胞と単シナプス性に接続します。

Kuypers(1981)は、この2つの系が担う運動機能を明らかにするために、サルの両系を選択的に切断しました。
その結果、腹内側系は中枢神経系による運動発現に際し、とくに体幹・四肢近位運動や姿勢の維持など運動の基本的な系として機能すること、背外側系は腹内側系による機能発現のもとで、独立した四肢の運動、とくに巧緻な手指運動に重要な役割を果たすことを示しました。

このことから、肢内および肢間協調といった肢運動と立位歩行時の姿勢の制御を必要とする歩行運動を実現するためには、両下行系がもたらす協調的機能統合が必須であることが示唆されます。

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