心臓が行う血圧制御機構

心臓のもっとも重要な生理学的機能は、十分な血液を全身の抹消組織にくまなく供給することです。そして、血液が心臓から送り出されるときに十分な量の供給をするためには、一定以上の血圧を維持することがきわめて重要です。

心臓のポンプとしての機能

心臓は血圧を0から130㎜Hgまで上昇させるポンプです。これは動脈血を腕からまっすぐ垂直に、重力に逆らって噴出させた時、およそ1m77㎝まで押し上げる力に等しいとされています。しかし、心臓の機能が急激に低下するようなアクシデントが起こった場合、たとえば、心臓を養う血管である冠動脈の一部がなんらかの原因によって閉塞する急性心筋梗塞が起こった場合、心臓のポンプとしての機能が著しく損なわれてしまったら、血圧は急降下したまま、回復することはないでしょう。

血圧制御機構

しかし、実際には、心機能が低下していったん血圧維持が難しくなったとしても、血圧が低下したままにはならない機構が生体内にはたらいているのです。
それが「血圧制御機構」というものです。
この血圧制御とは決して心臓だけでなされるのではなく、心臓の他にも、脳、腎臓、副腎、血管、自律神経などがあります。それぞれの臓器の機能が異なるように、血圧制御の方法も異なり、さらに、それぞれ制御のスピードもことなります。一般に、血圧が低くなりすぎた場合、その情報は、孤束核に伝えられ、交感神経の制御が解除されて、血圧制御機構が活性化されます。

血圧低下が著しいとき、血圧制御機構は具体的に、
(1) 飲水行動の促進による水分摂取の積極化
(2) 腸管や腎臓におけるナトリウム・水の再吸収の亢進
(3) 亢利尿ホルモンのバゾプレッシンの分泌亢進、尿量を減らして水分消失を制御
(4) レニン・アンギオテンシン系血圧制御システムを亢進
(5) 交感神経の亢進による血管収縮
これらの結果として、体内にナトリウムと水を貯留させ、また、血管を収縮させることで、血圧を上昇させることになります。

 

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