運動制御と異種表象の原理

運動計画の多くは空間座標の中で生じますが、脳は2つに分けられる座標系を利用しています。他者中心的座標では、種々の対象物の位置は、それらの相対的位置関係によって符号化されています。
他方で、自己中心的座標では、対象物の位置は、自己の身体部位のどこかとの相対的位置関係で符号化されています。
すなわち、意識的知覚に利用されている空間的表象(他者中心的)と運動のための空間的表象(自己中心的で知覚されないもの)との区別が必要となります。

意識的知覚に利用されている空間的表象と運動のための空間的表象

後葉頭の一次・二次視覚皮質からの2つの解剖学的線維結合のうち、ひとつは腹側の側頭葉に向かい、他者中心的空間を表象します。他方は背側の頭頂葉に向かい、自己中心的空間を表象し、前者は意識的な知覚に関与し、後者は運動行動に役立っています。環境の目標は、他者中心的空間で符号化されていますが、これは効果器に関しては特化することはなく、その環境における運動の望ましい結果を記述しています。
例えば、テーブル上のコップを動かす動作を行う身体部位は定められていないというものです。

自己中心的空間

自己中心的空間は、対象物と効果器との関係で定義されます。そのため、表象を作る前に効果器を選択しておく必要があります。また、他者中心的空間では、対象物の場所自体が固定され、符号化されています。
自己中心的空間では、身体が動けば、対象物の位置も移動し、意識的な運動制御では、身体部位を他者中心的空間枠組みとすることもあります。自己中心的空間は、身体のいずれかの部分を中心とした座標系に依存し、頭部や体幹を中心とする空間座標系の報告もあります。さらに、運動皮質における符号化も自己中心的空間において行われています。しかし、筋群の神経支配に関する符号化の部位が明らかになっていません。

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