廃用性筋萎縮に伴う形態的・機能的変化

廃用性の筋萎縮は、安静固定や長期臥床、免荷による非荷重により発生します。筋の短縮と仕事量の減少の結果、形態的には筋容量の減少、機能的には筋力低下を生じます。下腿部ギプス固定に伴う筋萎縮においての研究では、非荷重により筋萎縮は生じますが、その程度は筋によって異なり、抗重力筋が影響を受けやすいことが分かりました。特に最初の1週間の萎縮が最も顕著であり、約3ヶ月間の固定により、筋体積は健常肢に比べて平均12%減少し、組織化学的には筋線維の直径が平均42%減少したとされています。
また、筋線維タイプによって反応が異なり、一般にはタイプII線維よりもタイプI線維のほうが影響を受けやすいとされています。しかし、減少率は条件によって違い、タイプIとタイプII線維で有意な差がないとする報告や、上肢のギプス固定では、肘伸筋筋力には41%の筋力低下が生じ、上腕三頭筋はタイプI線維において25%、タイプII線維では30%の萎縮がみられたとする報告があります。

萎縮筋の構造変化

これらの萎縮筋の構造変化は、細胞レベルでは、筋線維の萎縮程度に応じて、結合組織、脂肪成分、水分含有量の増加がみられます。筋線維数の変化は少ないと考えられています。筋線維タイプではタイプI線維からタイプII線維への以降、相対的な速筋化が生じるとされています。アクチン・ミオシンフィラメントの配列の異常や断裂、消失や、タンパク質分解の増加によるタンパク質含有量増加、特に収縮タンパク質の減少が認められます。
また、運動神経終末部では、神経終末構造と支配筋の変化、アセチルコリン放出量の減少が生じます。

筋収縮機能

一方、筋細胞膜側では、遅筋の静止膜電位とナトリウムイオン-カリウムイオンポンプが低下し、イオン透過性の変化、張力発生に必要な電気刺激の周波数上昇、アセチルコリン受容体の密度増加、被神経支配の変化、神経刺激による筋細胞膜興奮までの時間延長などが生じるとされています。収縮機能では、最大収縮力や発揮パワーが低下し、最大短縮速度や弛緩速度は増加します。
また、代謝機能においては遅筋、速筋ともに解糖系酵素の活性が増加し、酸化系酵素の活性が減少します。

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