内臓痛とその関連痛

内臓の刺激はしばしばその臓器にではなく、それより離れたところにある体性組織で感じられる痛みを引き起こします。このような痛みを、その体性組織に関連付けられた痛み、すなわち関連痛といいます。

表在性の痛みは関連痛を引き起こさない。

体性深部痛覚も関連痛を引き起こしますが、表在性の痛みは関連痛を引き起こさないと考えられています。内臓痛が局部的であると同時に関連痛を起こす時は、この痛みはときにはその局所から離れた部位へと広がる、すなわち放散するように感じられます。関連痛についての知識と各内臓からの関連痛がどこに起こるかについての最もよく知られている例は、心臓痛による左腕内面に投射される例でしょう。その他の例では、横隔膜の中央部が刺激されて起こる肩の先端の関連痛や泌尿器系疾患においての腰部痛などがあります。さらに多くの例が内科学、外科学、歯学的に存在しています。しかし、関連痛の起こる部位はいつも同一部位であるとは限りません。

意外な場所にも関連痛が起こる。

意外な場所に関連痛が起こることは稀ではありません。例えば心臓痛が純粋に腹痛であったり、右腕に投射されたり頸部に投射されたりすることがあります。痛みが関連痛として投射されるとき、もとの痛みが発生した組織とと発生学的に同じ体節または同じ皮膚分節に由来する組織に投射されるのが普通です。これは皮膚分節の規則といいます。例えば、横隔膜はその発生過程中、頸部から遊離した生体時の位置である胸部と腹部の間に移動しますが、この時その支配神経、すなわち横隔神経を同伴します。横隔神経の1/3は求心性神経で、第2から第4頸髄のレベルで脊髄に入っています。このレベルはちょうど肩の先端からの求心性線維が脊髄に入るレベルに等しくなっています。

関連痛の主な原因は、中枢神経系の可塑性にある。

関連痛の主な原因は、脳に投射する同一の二次ニューロンの体性痛覚線維と内臓痛覚線維が収束することに基づく中枢神経系の可塑性であると考えられています。体性ニューロンと内臓ニューロンは同側の後角のI〜IV層に収束します。しかしVII層のニューロンには身体の両側から求心性神経が入ります。この収束により身体の痛みの根源の反対側に関連痛が起こることが説明されます。体性痛覚線維は通常二次ニューロンを発射させませんが、内臓の刺激が長く続くと、体性線維終末の促通が起こります。そうすると、体性線維がその二次ニューロンを刺激します。すると、脳はその刺激が内臓からきたものかその関連領域からきたものかを区別できなくなります。

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