成体期の可塑性の延長・再開について

臨界期とは生体の発達過程において、与えられた刺激への適応・発達が最も効果的に起こる時期のことを言います。

この臨界期は元来、特定の時期に限定されるものとされてきましたが、近年の研究により臨界期は延長または再開されうることがわかってきています。

これを証拠付ける研究としてフクロウを用いた実験があります。

フクロウは、獲物が出した音が両耳に到達するまでの時間差の情報によって獲物の正確な位置を算出することができます。

この聴覚によって得られる地図と単純な視覚によって得られる地図が同調することが狩りに重要であると言えます。

実験は、視覚地図をずらされたフクロウがそれに合わせて聴覚地図を再編させることができるのかというもので、成体フクロウではこれを一致させることができず、再編させられたのは臨界期にある若年のフクロウだけでした。

しかし3つの方法によって成体フクロウでも地図を一致させることができるとわかりました。

1つ目の方法としては、臨界期で一度再編したことのあるフクロウを用いるというものです。

一度視覚地図に合わせて聴覚地図を再編したことのあるフクロウは成体になってもまた一致させたといいます。

一度それが起これば、再編のための痕跡を神経系に残すのではないかと考えられています。

2つ目の方法は、視覚のズレを少しずつ段階的に増やしていくというものです。

この方法によって1回で大きく視覚をズラされた個体の2〜3倍の適応が見られたといいます。

3つ目は、フクロウに生きた獲物の狩りをさせるというものです。

通常は研究室で死んだマウスを給餌させられるフクロウですが、生きたマウスを獲らせたところ大きな可塑性が見られました。

こうした発見は行動や運動は神経系の再編能力に影響を与えるということを示唆しています。

これら臨界期の可塑性と成体期の可塑性は同義ではなく、臨界期は個体を環境に受動的に晒すことによっても得られる一方で、成体期では個体が刺激に対して注意を払うことが必要であるとされます。

また近年の視覚などの研究によって哺乳類においても臨界期の延長・再開の可能性が示唆されています。

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