ACLと大腿四頭筋の関係
正常な膝関節のACL(前十字靭帯)は、脛骨の前方移動に対する受動的な抵抗の85%を担います。
前方移動距離が反対側より8mm以上大きくなると、ACL断裂の可能性が示唆されます。
しかし、ハムストリングスが防御的に緊張している場合、脛骨の前方移動がある程度制されるため、ACL断裂を見逃さないよう注意が必要です。
つまり、ハムストリングスはACLの共同筋とも言えるでしょう。
これに対し、大腿四頭筋はACLの拮抗筋と呼ばれます。
これは大腿四頭筋の収縮力によってACLが伸張されている事実からそう呼ばれ、実際に15°屈曲位の大腿四頭筋の等尺性最大収縮後にはACLが4.4%伸張されると報告されています。
この大腿四頭筋の働きは、膝関節が伸展位であればあるほど強く、屈曲位が大きくなると脛骨を前方に滑らせてACLを伸張するような能力も低下します。
膝全体の安定性を考えたときには、大腿四頭筋やハムストリングス、下腿筋などの共同収縮が重要であるため、大腿四頭筋の筋力は間違いなく必要になりますが、こうしたACLを自然に伸張させるメカニズムの理解は、損傷の予防や再建術後のリハビリに有用な情報となるでしょう。
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