赤ちゃんの歩行学習と神経機構

赤ちゃんの足を床に接地させると、歩行運動のような反射を見せることはよく知られていますが、この動作は生後1〜2ヶ月でいったん消失します。

ステッピング反射が再び見られるようになるのは歩行を始める数カ月前であり、二足歩行が可能になるのは通常生後1年から1年半後です。

歩き始めの時期は、歩幅の広いすり足で歩き、歩行周期は一定せず、全身の協調性やバランスが悪く、そしてよく転んでしまいます。

一般的には、安定した直立二足歩行を行うようになるのは3歳以降とされています。

つまり、人間は生まれつき二足歩行を行うための基本的な神経機構を備えているものの、真の二足歩行を獲得するまでには、相当の学習期間が必要であるということです。

最近の研究では、この学習に皮質線条体ニューロンのドーパミン依存性シナプス長期増強(LTP)あるいは長期抑圧(LDP)が働くことが明らかになってきました。

線条体ドーパミンは、行動により得られた報酬が当初の見込みより大きいと多く放出され、報酬が見込みより小さいと放出量も小さくなります。

すなわち、ドーパミン放出は、報酬量の見込みと実際に得られた報酬量の差分を線条体に伝える信号として働きを持つと考えられます。

そして、皮質線条体ニューロンの活動後の一定時間内にドーパミン放出が生じると、皮質線条体ニューロンと線条体中型有棘細胞間のシナプスにシナプス長期増強、すなわち神経回路の強化が生じます。

以上を考え合わせると、大脳皮質活動の結果として生じた行動により、当初の見込みより大きな報酬が得られればその神経活動は強化されることになります。

これによって結果的に行動がうまくいったら、その行動パターンをよく覚えておくというタイプの学習が可能になります。

このような機構に基づく学習は強化学習と呼ばれ、試行錯誤による学習に適しています。

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