慢性的な頭部前方位姿勢について

頭頸部の安定には、多裂筋や回旋筋、頸長筋や頭長筋、棘間筋のような短い筋が貢献します。

これを更に、斜角筋、胸鎖乳突筋、肩甲挙筋、頭・頚半棘筋、僧帽筋などの長く厚い筋が補強する形でその安定性を高めています。

これらの長く厚い筋は、時として、前額面・矢状面で強力な垂直安定性をもたらします。

この垂直安定性のためには、屈筋と伸筋が共同収縮する必要があり、頭頸部の前後アライメントが正常である必要があります。

さらにこれらの筋は胸骨、鎖骨、肋骨、肩甲骨や脊柱に付着しており、この付着部を固定する筋、例えば僧帽筋下部や鎖骨下筋などの活動も欠かせません。

屈筋と伸筋の共同収縮は垂直安定性をもたらしますが、どの筋にも過度な筋緊張があってはならず、それがあるともはや安定性は崩壊します。

そのような安定性崩壊の1つとしては、頭頸部の過剰な突き出しを伴う慢性的な頭部前方位姿勢があります。

習慣的な頭部前方位姿勢には、主に2つの原因があると考えられています。

第1の原因として、頸部の極度の過伸展によって、胸鎖乳突筋、頸長筋、前斜角筋のような頸部前方筋が損傷することにあります。

その結果、過剰に引っ張られた筋に生じる慢性的なスパズムが頭部を前方に移動させ、特に頸胸椎移行部に過剰な屈曲をもたらします。

頭部前方位姿勢に特に多くみられるのは、胸鎖乳突筋の変化だと言われており、この筋の停止部は通常、胸鎖関節よりも後方に位置しますが、前方位とともに、胸鎖関節直上まで偏位します。

第2の原因として、頸部前方筋が徐々に短縮することにあります。

テレビ画面やパソコン画面を見る際の頭部を突き出した姿勢が、まさにこれです。

この姿勢を長時間保持すれば、筋の静止長が変化し、最終的には前方位姿勢が自然な姿勢として定着してしまいます。

これらの原因がどちらにせよ、前方位姿勢は肩甲挙筋や頭半棘筋、大後頭直筋などの後頭下筋群に疲労が生じ、多くの筋に痛みが生じます。

こうした慢性的な頭部前方位を改善するためには、適切な姿勢の認識、適切な作業空間の構築、治療エクササイズや神経筋コントロール、徒手療法などさまざまな方法でアプローチしていかなければなりません。

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