咀嚼筋と直立姿勢

人の「直立姿勢」は、重い頭部をのせていて重心が高いのに加えて、面積の狭い2本足で立っているために、常に不安定な状態にあります。

それでも直立姿勢を保っていられるのは、半規管が平衡器として働くからです。

これに加え、眼から入ってくる視覚情報にもとづいて脳から筋肉の姿勢をコントロールするように指令が出ているからでもあります。

脳は、体が揺れたことを感知したことを感知した平衡器官からの情報を処理し、筋肉の元の状態に戻すように指令を出します。

たとえば体が右に傾くと、右側の筋肉を収縮させ、元の位置に戻しているのです。

これを平衡反射といい、足の母趾外転筋や大腿二頭筋、背中やお腹の筋肉など、多くの筋肉が関与しています。

そして頭の位置は、主に側頭筋と咬筋と頚部の筋肉群によってコントロールされています。

これらの骨や腱によって連動するようになっているので、姿勢をスムーズにコントロールできるのです。

咀嚼に関与する左右4対の筋肉群【側頭筋、咬筋、内側翼突筋、外側翼突筋】をまとめて『咀嚼筋』と言います。

「咬筋」は、下顎を引き上げて上下の歯を噛み合わせる働きをします。

大臼歯で強く噛むときの力は咬筋によるものです。

「側頭筋」は、下顎を上げたり後ろへ引っ張ったりします。

歯ぎしり(ブラキシズム)は、咬筋と側頭筋が無意識のうちに活動してしまう現象です。

「内側翼突筋」は、下顎の内側に筋肉で、下顎を引き上げて口を閉じさせ、上下の歯を噛み合わせる働きをします。

「外側翼突筋」は下顎の関節部分にある筋肉で、関節円板として口を開く働きをします。これらの咀嚼筋のほか、頸の周囲には24種類もの筋肉が存在し、噛み合わせと下顎の位置調節に関与しています。

筋肉が過度に緊張した状態をスパズム(拘縮)といいます。

咀嚼筋のスパズムは、骨や腱を介して全身の筋肉へと波及します。

直立姿勢の不安定さを感じたら、それは噛み合わせが原因かもしれません。

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