L5-S1のすべり症

脊椎前方すべり症とは、ある椎骨がほかの椎骨と比較して前方にずれた、あるいは変位した状態のことをいいます。

このような状況は、L5-S1接合部に生じる場合が多いとされ、この疾患は後天的なものもあれば、先天的なものもあります。

L5とS1に生じる後天性の前方すべり症は進行性である可能性が高く、一部はこの領域の過伸展が関係する身体活動を反復したことにより生じるものだとされています。

また、重症の前方すべり症では、その神経束がL5-S1接合部を通ることから、馬尾に損傷を与える可能性も示唆されています。

前述のように、下部腰椎を過伸展させる運動やその他の活動は、前方すべり症の患者には禁忌であり、とりわけ、疾病が不安定あるいは進行性のものであれば絶対禁忌となります。

なぜなら、下部腰椎の過伸展は腰椎前彎を増大させることで、仙骨をより傾かせ、L5-S1間の前方剪断力が増大するためです。

この仕組には脊柱起立筋群も関わっています。

L5-S1に関係する脊柱起立筋は、その力のベクトルによって前方剪断力を生み出します。

理論上では筋の力が強いほどL5-S1接合部での前方剪断力も強くなります。

特に、筋活動によって腰椎に前彎が増強すると、剪断力はさらに大きくなります。

腰椎部の起立筋によって生じる前方剪断力は、主としてL5-S1接合部に現れ、腰部全体に生じることはありません。

正常な位置では、中位腰椎の椎体上面は、より水平の向きになります。

この部位を横断する脊柱起立筋は、腰椎椎体間関節に作用する後方剪断力を生み出す可能性が高いとされています。

この筋由来の剪断力は、生理的に有用で、身体の前方で大きな荷物を持ち上げるときに自然に生じる前方剪断力に対する抵抗力となります。

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