腸管と脳の関係

腸管は、神経細胞がぎっしりつまった脳とは異なり、管状の器官です。

しかし、それはただの管ではなく、自ら考える能力をもった管となります。

腸管の管壁には、腸が正常に働くようにコントロールする2種類の神経系が存在します。

腸管の粘膜下にあるマイスナー神経叢と、輪走筋と縦走筋の2つの筋層の間にあるアウエルバッハ神経叢です。

これらの神経叢の指令の元に筋肉が動き、腸の食物をゆっくりと下方に送る複雑な蠕動運動が生じます。

腸が、他の臓器と際立って異なるところは、脊髄に匹敵する独自の神経ネットワークをもっているところでしょう。

この神経ネットワークは求心性に作用して、脳をコントロールする働きをもっています。

たとえば、食後に血中に放出されるホルモンであるコレシストキニンなどによって、食物が腸内にあることが脳に伝えられると、摂食抑制作用が働きます。

逆に胃が空になると、胃腺で作られるグレリンという物質が脳に情報を伝え、空腹感を感じさせます。

さらに、食物を摂取して腸から吸収された結果、血中のグルコース濃度が増加すると、それに対応してエネルギー消費を増加させるような情報が脳に送られるなどといったシグナルを送ることができます。

このように、腸は脳をコントロールする働きをもっていますが、心や意識にどう関わっているのか、これは未だはっきりとわかっているわけではありません。

しかし、「腹をくくる」や「腹をたてる」など心や意識を表現する慣用句があることや、英語で腸を意味するgutはgut feelingで第6感や虫の知らせといった感覚的な言葉となることから、古来から腸は心や意識の関わりがあるのではないかと考えられていたのかもしれません。

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