クレンチング(食いしばり)と運動の関係

クレンチングとは、無意識的に上下の歯を強く噛みしめる動作をいいます。

習慣化されたものはブラキシズムとよばれ、顎関節症、歯周組織の炎症などの原因となります。

このクレンチングは無意識的、無自覚的に起こるものであるため発見されにくく、日常の中に紛れ込んでいると言っても過言ではありません。

また健常者であっても強い精神的緊張や身体的ストレスに伴って起こることが知られています。

特に最大筋力を発揮しようとする場合にはクレンチングが起こりやすいと言われています。

さらにクレンチングが起こる人でも起こる動作と起こらない動作があるなどの個人差があります。

クレンチングにより咬筋、側頭筋といった咀嚼筋や胸鎖乳突筋が関与しますが、胸鎖乳突筋は多くの動作において頭部の安定に働くため、主に咀嚼筋の関与が大きいと考えてよさそうです。

クレンチングによる咀嚼筋は運動の主動作筋に先駆けて活動することが示唆されており、言わばフィードフォワード機構として働いていると推測されています。

これはおそらく、最大筋力を発揮するような運動において、反復的な「食いしばる」という運動経験が学習され、無意識的・自動的な運動としてプログラムされたことに由来するのだと考えられています。

運動中クレンチングを行っている人においては、筋力発揮に対する心理的抑制を抑制しているという報告があり、より強い筋力発揮を望めることにはなりますが、このときの咬合力は、意識下における最大咬合力に同等もしくはそれ以上になると言われており、口腔内の問題はもちろんのこと、顎関節症や関節円板の損傷、慢性的な全身の筋緊張増加、呼吸・循環機能に影響を及ぼすと考えられています。

クレンチングがない人は、噛み締めても発揮筋力に差はなかったと言われており、種々の影響を考えた場合、クレンチングを改善することは重要だといえます。

無意識的にプログラミングされた運動ですから、装具を含め、運動学、心理学、神経生理学などさまざまな側面からの改善アプローチが必要になるでしょう。

クレンチングが出る動作、出ない動作を確かめ、その動作でなぜ起こるのか、それを獲得することになった原因は何なのか、一つ一つ問題を解決していきたいものです。

ではまた。

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