正しい脂肪酸の摂取を。

脂肪と聞くとみなさんは肥満や動脈硬化などの原因というように悪い面だけを考える方が多いのではないでしょうか。しかし、私たちはエネルギーの約25%を脂肪からとっています。また、脳は水分を除くと約70%は脂肪からなっていたりもします。このように脂肪は身体にとって非常に重要な栄養素なのです。

脂肪酸は構造の違いから飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸の三つに分けられる。

脂肪は主に脂肪酸から出来ています。さらに脂肪酸は構造の違いから飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸の三つに分けられます。脂肪酸の中で植物油や動物油で最も多いのが、飽和脂肪酸ではパルミチン酸とステアリン酸、一価不飽和脂肪酸ではオレイン酸、多価不飽和脂肪酸では植物油に含まれるリノール酸とリノレン酸です。例えば、牛肉や豚肉では、最も多く含まれている脂肪酸はオレイン酸で、次にパルミチン酸とステアリン酸、多価不飽和脂肪酸ではリノール酸が少し含まれているだけです。また、魚ではEPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)と呼ばれる脂肪酸が多く含まれています。

特定の脂肪酸をたくさん取ることは好ましいことではなく、さまざまな脂肪酸をまんべんなく取ることが大事!

脂肪酸はこのようにさまざまな種類のものがいろいろな食品に含まれていますが、その働きにそれぞれ特徴があります。飽和脂肪酸は主としてエネルギー源として働きます。これに対して、不飽和脂肪酸は細胞膜の成分になったり、生理活性物質になったりします。食ベ物から摂取した脂肪は十二指腸で酵素の働きによって脂肪酸に分解されます。人は分解された脂肪酸から飽和脂肪酸や一価不飽和脂肪酸を作り出すことができます。しかし、多価不飽和脂肪酸のリノール酸やリノレン酸は作り出すことができないので、どうしても食ベ物から摂取しなくてはなりません。

一時期、リノール酸はコレステロールを減らして、動脈硬化を防ぐ作用があるとされ、生活習慣病の予防に摂取が勧められてきました。しかし、最近の研究ではリノール酸をあまり取りすぎるのは健康上よくないということが明らかになりました。また、コレステロール低下の作用は、これまでコレステロール上昇の元凶のように言われてきた飽和脂肪酸のステアリン酸にもあり、パルミチン酸もコレステロール上昇に影響を与えないことが分かってきました。さらに一価不飽和脂肪酸のオレイン酸にはリノール酸を上回るコレステロール低下作用があるということも明らかになってきました。

このように脂肪酸の研究が進んでくると、特定の脂肪酸をたくさん取ることは好ましいことではなく、さまざまな脂肪酸をまんべんなく取るようにすることがよいと考えられています。

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