コアの安定性に呼吸が重要であると認知されてから、呼吸のトレーニングなど呼吸に対する注目は近年高まりつつあります。
一般的な呼吸のリズムは、正常の場合、12~20回/分で、吸気は吸気の1〜1.5倍になるといわれています。
そこから腹式呼吸が優勢になると8~12回/分へと低下し、呼気は吸気の2倍の長さになります。
また浅い呼吸は呼気を減少させるとともに、胸郭伸展への可動制低下をもたらします。
一般的な伸展制限はT4~T6レベルに見られることが多く、その結果胸椎後弯が増大します。
さらに可動性が欠陥したパターンが慢性化した場合には、胸椎後弯が慢性化してしまい、肩甲骨は外転、頭部前方偏移といった姿勢になってしまいます。
このように正常な呼吸ができなくなると姿勢にも影響し、それが固定化されると今度は姿勢が呼吸に影響を与えるというような相互作用が生じてしまいます。
呼吸における有酸素能と脊柱安定化
例えば、トレーニング中に息が苦しくなってくると顎があがってきたり、呼吸をする度に肩が上がったり、呼吸が荒れてくると様々な姿勢変化を観察できると思います。
このように酸素に対する生理的要求が高くなると、神経系が脊椎安定性よりも呼吸の維持の方を選択します。
当然ながら、まず酸素を、ということになるわけです。
このように考えると呼吸を安定させるにはまず循環器能力、有酸素能力を高めることも重要になってきます。
一方で、脊柱の安定性にかかわる呼吸の働きとしては、腹筋の強さは外部からのストレスがなければ、安定性にそれほど重要ではないとも報告されています。
腰痛の権威McGillによるとコアの収縮は最大努力収縮の10%程度で良いとされています。
コアの安定性としては、腹部の引き締めを維持しながら正常に呼吸できることが理想的。
たとえ筋の強さが十分であっても、腹壁の筋の適切な協調がない場合は、異常パターンの呼吸に陥ったり、激しい運動時に脊椎不安定性に至ることもわかっています。
呼吸とパフォーマンス
不随意に永続的に行われる呼吸。
呼吸はパフォーマンスに多大な影響を与えます。
ヒトが誕生後、すぐに泣くことによって呼吸を開始するように、まずコンディションを高めるためには正しい呼吸を修得することがトレーニングの第一歩になるということがいえるでしょう。