運動の学習と生物学的認識過程|フィジオ福岡 運動学習

ある運動動作を習得する際には、その目標を達成するために私たちトレーナーはその動作習得を狙って、様々なトレーニング課題の変更を行います。
例えば、どの感覚で何を認識するのか(知覚)、何に意識を集中するのか(注意)、何を憶えればいいのか(記憶)、仮説と結果をどのように照合すればいいのか(判断)といった認知過程の活性化への援サポートが必要であり、これがクライアントの問題解決能力という学習過程を発達させることになります。

意識的にカラダを操作するような運動は本来の運動の発現とはまた違うものであることを忘れてはいけません。

最近でこそ「正しいフォームでやりましょう」と細かい動きの学習を目的にするトレーニングジムも増えてきました。
ストレングストレーニングならいざしれず、動きのトレーニングとなると自分でやれないというクライアントが多いのも事実ですし、もう一つはパーソナルトレーナーが増えパーソナルで対応するケースが増えたこともその理由と言えるでしょう。
しかしながら、パーソナルトレーニングで動き方の指導を受ける場合に注意しなければいけないこともあります。

これはコーチングの話にもなるのですが、動きにフォーカスして指導を受ける場合、動きの形にこだわるのではなく、動きの中で得る感覚、体験を大事にするということです。
コーチングとは、どちらかというと「声掛け」「動作指示」になりがちな部分があります。
「股関節で・・・・」、「膝が曲がらないように・・・」など、部分にフォーカスしたり、その動きにフォーカスしてしまうことが多いように思います。
しかしながら、意識的にカラダを操作するような運動は本来の運動の発現とはまた違うものであることを忘れてはいけません。

体験を絶えず修正することによってのみ私たちは目的遂行のための正しい動作に到達できるようになります。


例えばですが、自転車に乗る練習をする場合、私たちは最初自転車にのるためにはあまり必要でない偶然的事実によって規定された多くの不適当な運動を続けてなかなか乗れない状態が続きますが、やがて突然平衡を取って正しく進むことができるようになります。

どう乗ったらいいのかというのは、初めの種々の運動(チャレンジ)より、様々な体験を積み、「どの方法が一番乗れそうか」という本人の体験の中で動作が成熟していくのです。
これらのチャレンジは、本来自転車に乗るという動作とは直接には何らの関係も持たない動作かもしれませんが、その中で得られた体験が最終的には自転車を乗るための必要体験、必要感覚になるわけです。
勿論これらの運動も無計画的なものではなく、(車体を押さえてもらったり、補助輪つけたりなど様々な工夫はありますが)、この体験を絶えず修正することによってのみ私たちは目的遂行のための正しい動作に到達できるようになります。

しかしながら、これらの運動体験はそれ自身だけでは決して直接に正しい運動に導くことはないと考えられます。
補助輪をずっとつけていては、なかなか自転車には乗れないですし、どこかで補助輪を外して走行する体験が必要です。
また平地では運転できても、ガタガタな道や坂道など、環境が変わると急にそれまでの乗り方では対応できなくなることは想像できることでしょう。

私たちが目指すべき動作とは「正しい動作の習得」ではなく「その環境下での一番適当だと思われる動作の習得」というのが適切なのかもしれません。

自転車にのるのを例にしましたが、このように考えると、本質的に正しい運動は、誰かに教わって頭で考えてイメージして行われるものではなく、実際に行われる運動と環境条件とが合致した時、偶発的に現れるものだということがいえます。
この「偶発的」とはいわば、「無意識」といえるのかもしれません。
体験した「経験」「感覚」から、その環境下で一番適切なものを選択して発現させる。
それが動作習得のコツになるのかもしれません。
そのように考えると、経験や動作感覚の集積こそが、様々な運動を学習する要素になっていきます。
つまり「様々な体験をすること」こそ「そのときにどうやって動くのが適切か」という認識をもたらすものを含んでいるということです。
この「生物の運動と環境条件との合致」という現象と、「生物学的認識過程」との間には、様々な体験をし、あらゆる誤った道をたどりつつ、ついに「適当」な全体像に到達するという特徴があります。
そのように考えると、私たちが目指すべき動作とは「正しい動作の習得」ではなく「その環境下での一番適当だと思われる動作の習得」というのが適切なのかもしれません。

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