トレーニングを効率的に行うにはどういう運動を行うのかイメージしながら、その運動を遂行することが重要になります。
そのためには「運動のイメージ想起」が不可欠です。
「運動のイメージ想起」はAyresという研究者が「The Ayres Space Tests」の因子分析の結果、視覚的イメージを心的に回転させる能力を抽出し、それを「ヴィジュアライズドローテーション(visualized rotation)」と名づけ、感覚統合の発達の指標としたことから、その歴史が始まります。
また、ShepardとMetzlerは、知覚された物体のイメージを心的空間の中で同転させる操作を「メンタルローテーション(mental rotation )」と名づけ、その反応時間が、図形の回転角度の変化に応じて直線的に増加するという研究を発表し、イメージの科学的研究の端緒を開いたといわれています。
「運動のイメージ想起」を考える上で重要な「メンタルローテーション」。
このメンタルローテーションの能力は、5−6才児ですでに発達しているといわれていて、実際に物体に触れ、動かすという触運動覚的経験を通して促進される能力になります。
これによって物体の性質や3次元的関係を理解できるようになり、触・運動覚と視覚や聴覚が統合されるとイメージ上で空間的操作を行うことが可能になっていきます。
わたしたちがどう動くのがいいかと、頭でイメージ想起する能力は、子供の頃の触・運動覚的経験を通して構築されていくものであるというのはトレーニングを考える上でも非常に重要なポイントですよね。
このメンタルローテーションの発達ですが積山は、メンタルローテーション課題を遂行する感覚は、「外的動作から内的な運動イメージ、視覚運動イメージの順で発達する」と報告していて、さらに年少児では外的動作として出現しやすい傾向が認められやすいと報告しています。
このことは、「心的イメージの起源を身体運動」とするPiagetの説や、「動作的表象から映像的表象へ表象が発達する順序」を仮定したBrunerの説とも一致していることからも、まずは動作として表出される、そして頭のなかでイメージする、最終的にはみることでイメージできるという順序にて発達するということが示されています。
このように、メンタルローテーション課題施行中の心的過程は、より年少児では身体運動と密接に関係していることが報告されており、成長とともに身体運動を伴わずに処理できるようになっていくことがわかっています。
その発達の結果、日常生活において空間内の物体やその位置関係、およびそれらの変換を表象する心的過程を無意識のうちに行なえるようになっていきます。
実際のトレーニング指導の中でも、なかなかイメージ通りに動けないという方は多いかと思いますが、まずはよく動き、自己の内的な運動イメージを想起していくことで、最終的には運動を伴わずとも、その運動と同じ運動イメージの想起が可能になっていくと思います。