ディトレーニングと筋萎縮|フィジオ福岡 筋力低下の科学

筋力トレーニングを続けてきたのに、病気やケガ、仕事の都合などでトレーニングをやめる、あるいは休んでしまう場合があります。このように一時的、または永続的にトレーニングをやめることをディトレーニングといいます。

筋の発達を抑制するホルモン「ミオスタチン」

ディトレーニングから約2週間は筋力が落ちることはありませんが、3~4週間すると運動に加わる筋線維の数が減少し、1~2か月後には筋の萎縮が始まります。筋の萎縮が起きるのは、ディトレーニング中に、筋の発達を抑制するホルモン「ミオスタチン」が増加するからだと考えられています。ちなみにスプリンターなどスピードが問われる種目では、大きな影響はありません。スピード能力では、筋線維のタイプによって生まれつき、つまり遺伝できまっているためです。数か月しかトレーニングをしていない初心者は筋肉が落ちるのも早いです。しかし、長い期間をかけてトレーニングをしてきた鍛錬者は筋肉が緩やかに衰える傾向があります。筋力トレーニングで肥大しやすい速筋線維はディトレーニングでは萎縮しやすく、遅筋線維は肥大しにくいが萎縮もしにくいという特徴があるので、初心者は速筋線維の萎縮が起き、急速に筋肉が衰えると考えられています。仕事の都合などでトレーニングを続けにくくなった場合は、完全にやめるのではなく、軽めのトレーニングで維持するのもいいかもしれません。2~3週間なら強度を維持すれはトレーニングの量と頻度をへらしても筋力は低下しません。それまでのトレーニングを無駄にしないようにしましょう。

筋力低下とアクチン・ミオシン

筋力低下のひとつの理由として、筋の筋節構造のなかの収縮要素であるアクチンとミオシンの数が減少することがあります。筋肉の萎縮は多くの場合、収縮時や触診時でも痛みを伴わず、筋肉に抵抗運動負荷がかからなくなると萎縮が起こります。なぜ起こるかというと、並列の筋節の数が少なくなり、そして直列の筋節の数もその並列のものほどではないが少なくなり、結合組織の量が少なるなることで起こります。筋節の数が少なくなり、結合組織の量が少なくなると、筋肉の自動的と他動的な張力に影響を及ぼします。また、関連している関節の動的、静的な指示に影響を与えます。その結果、自動的なトルクを筋肉が発揮する能力弱くなり、その筋肉によってコントロールされている関節の安定性が低下します。

足関節を例に例えると、腓骨筋群に筋力低下が起こると外反が弱下し、内反を制限する他動的な安定性も低下します。筋肉の他動的な張力もまた関節のアライメントに影響を与えます。萎縮は収縮要素が減少するということなので、筋肉の断面積とその固さが筋力を評価する一つの指標となります。健常者やスポーツ選手であっても、筋肉のパフォーマンスに欠陥があることもあります。欠陥が生じたのは、その個人独特の構造や活動の仕方に微妙な違いがあり、それが筋肉の働きに影響を及ぼすからです。身体の運動パターンがある特定の筋力低下に関与していることが多くあります。変容した身体の運動パターンとそれに伴う特定の筋力低下に対する改善には、身体の運動パターンを改善することが必要であり、ただ筋力低下のある筋肉を強化するだけではなく、その動きに関与する筋肉をバランスよく強化していくことが必要です。

関連記事

  1. 糖質制限と肥満解消 | フィジオ福岡 エネルギーの科学

  2. ランニングの腕と脚の負担度|フィジオ福岡 ランニングの科学

  3. 関節の構造強度とフォースカップルの働き| フィジオ福岡 関節運動学

  4. アスリートにもよくみられる仙腸関節痛|フィジオ福岡 障害予防を考える

  5. 膝にみる膝窩筋の動的制御機構|フィジオ福岡 膝の動的安定化機構

  6. 神経の可塑性と機能変化から構造変化の流れ|フィジオ福岡 運動学習

閉じる