後十字靭帯損傷損傷の受傷転機と症状は、転倒した際に、膝関節前面を直接地面に打つなどの接触損傷での受傷ががほとんどになります。
急性期には、膝関節後面のPCLの脛骨付着部に疼痛と圧痛がみられ、脛骨粗面部を前方から叩くと膝関節後面に疼痛が再現します。腫脹や可動域制限もみられ、膝関節血症による膝蓋跳動もみられます。慢性期には、疼痛や腫脹は改善し、歩行も含めほとんどの日常生活動作に支障はなくなります。
検査と診断は、受傷転機と膝関節後面の疼痛から診断が予測され、関節穿刺で関節血症が確認されれば、PCL損傷の可能性は高くなります。診断は、sagging sign・後方引き出しテストなどの徒手検査により可能になります。補助診断も有効で、KT-2000などのストレスマシーンは不安定性を健側と比較することで高い診断率を有します。MRIはPCLとともに半月板などの合併損傷の診断にも有用となります。
治療法は、単独での損傷の場合、保存療法が原則となります。重度の損傷に対して3ヵ月間の保存療法を施行しても不安定性により復帰が困難な場合は手術(再建)を考慮します。他の靭帯損傷も合併している場合には総合的に判断します。
復帰時期は、2度損傷の場合は受傷後8週間程度で、3度損傷の場合は受傷後4~5ヵ月程度が目標となります。リハビリは、PCLへのストレスを考慮してスクワット・ランジ・レッグエクステンションなどの大腿四頭筋のトレーニングが必要となります。急性期は、レッグカールなどのハムストリングスのトレーニングは禁止にして、膝窩部の疼痛が改善した後にジョギングを開始します。