鼠径部痛症候群は、サッカー選手に多く、内転筋の柔軟性低下と関係していると考えられています。潜在する鼠径ヘルニアとの関連が疑われたこともありますが、明確に示すことができていない例も少なくないとのことです。
症状は、鼠経管周囲・大腿近位内側および前面・下腹部などに局在が明確でない疼痛があります。動作により疼痛が増強することが多く、特に股関節内転に伴う疼痛がみられやすくなります。股関節内転拘縮と外転筋力低下があり、疼痛・拘縮・筋力低下の悪循環に陥ることが多くなります。
検査と治療→恥骨や坐骨の疲労骨折・大腿骨頸部骨折・腰椎椎間板ヘルニア、様々な股関節疾患で鼠経周囲の疼痛をきたすことがあるので、これらの鑑別をするためのX線検査・MRIは必須になります。他の原因疾患が認められない場合には、自覚症状と関節可動域の減少・外転筋力の低下・筋腱の柔軟性低下などから診断を下します。以前は、鼠径ヘルニアの手術が行われていましたが、最近では保存療法が主流になってきています。安静にしていても疼痛の改善はあまり期待できないため、鎮痛剤を使って疼痛をある程度コントロールしながら股関節周囲の柔軟性の獲得と筋力増強をはかります。
リハビリテーション→内転筋の拘縮と外転筋力の低下が疼痛と関連していると考えられるため、内転筋の拘縮の除去と股関節周囲筋(特に外転筋)の筋力アップが必要になります。ただ、大きな負荷がかかった状態で股関節外転や伸展を行う運動は疼痛を再燃させる可能性が高いので避けなければいけません。