みなさんは「胃下垂」という言葉をよくご存知かと思います。
胃が骨盤の方まで下がってしまっている状態を「胃下垂」と呼びます。
普段、食事をすると下腹部がぽっこりしてしまいお腹が張ってつらいのは胃下垂のせいだと思っている人もいるかもしれません。
胃下垂は悪者のように思われがちですが実はそれは間違いです。
「胃下垂」は健康に良い
世界的な消化器病学の教科書であるボッカスには1940年代にすでに胃下垂は病気でないと記載されています。
それどころか、胃下垂は様々な腹部症状に対して抑制的に作用していることが報告されています。
なんと「胃下垂」は健康に良いというのが専門家の見解です。
胃下垂の人はそうでない人と比較すると胃部不快感が少なく、肥満がほとんどなく、血糖値や血圧や中性脂肪が低く、善玉のコレステロールであるHDLが高いなど現代のような飽食の時代にあっては健康に有利に働くことが分かってきました。
では、胃がムカムカしたり、もたれたりするのはなぜなのか?
それは「機能性ディスペプシア」という別の病気ということがわかってきています。
「機能性ディスペプシア(FD:Functional Dyspepsia)」は、胃もたれやみぞおちの痛みなど、胃の不快な症状が続いているにもかかわらず、内視鏡で見ても特に異常が見られない病気。
胃の粘膜など目に見える異常がないのに、胃の働き=機能に問題があるのがこの病気の特徴になります。
そう考えると、胃下垂は濡れ衣ということになります。
胃下垂は病的なものではないし、胃の形態の一時的な変化である。
それどころか胃のバリウム検診を受けた人の中で胃下垂と診断される人は全体の約5%程、毎回胃下垂を指摘されたかどうかに調べてみると、1回目胃下垂と診断された人が2回目胃下垂と診断された人は14%ほど、3回目ともなると診断されたのはわずか1.4%、4回目ともなると0%と一人もいなくなります。
つまり胃下垂は病的なものではないし、胃の形態の一時的な変化であり、永久的な変化ではなく、ずっと下垂している人は少ないということなのです。
ましてや、ぽっこりお腹やお腹の張りと胃下垂は関係ないことが報告されています。
一昔は「私、胃下垂だから・・・」というような話があったかもですが、一般的に知られてるような話とはだいぶ変わってきているといえるでしょう。