大腿骨の頸体角と内反股・外反股|股関節バイオメカニクス

大腿骨の頸体角って聞いたことはありますか?
なかなか耳に聞き慣れない言葉だとおもいますが、要するに大腿骨が骨盤にはまっている先端の部分には角度がついているということ。つまりこの角度です。

 

ヒトの平均的な大腿骨頸体角はおよそ125°と言われています。
他にも、126°、128°、130°であるとも言われているため、その中を推移しているものだと思われます。
内反股はこの頸体角が90°を下回った、外反股は150°を上回った状態のことを指します。
こういった大腿骨の頸体角の変化は関節に対して良くも悪くもさまざまな影響を及ぼします。

内反股の特徴

例えば、内反は股関節外転筋力を増加させます。
内反によって生まれる大きなてこ効果が股関節外転筋の効率を増加させます。

この状況は、外転筋力が低下している人にとっては有益となります。
また、外転筋のてこ作用の増加は、歩行立脚時に必要とする外転筋の負担を少なくします。
人工関節の方を考えると、歩行中の股関節外転筋力の要求の減少は歩行時の過度な摩耗から関節や不安定な人工関節を保護します。
変股症の手術である内反骨切り術では、骨頭と寛骨臼の位置関係を改善し、関節の安定性を獲得します。
しかし、内反股では大腿骨頸部に曲げる力が加わります。
この力は頸体角が90°に近づくほど増加し、この力の増加は大腿骨頸部上面の張力を増大させます。
つまり、この状況は大腿骨頚部骨折や人工関節の構造的破壊の原因となることがあります。

また、著明な内反股は骨頭と骨幹端の間の垂直方向の剪断力を増加させます。
これは小児の大腿骨頭すべり症として知られる状態を招くことがあります。
さらに内反股は股関節外転筋の長さを短くするため、外転筋そのものによる筋力の産生能力を低下させ、中殿筋跛行の可能性を増加させます。
この筋力の低下はてこによって得た高い外転効果を相殺してしまうため、これはむしろバランスが負に傾いていると言えます。

外反股の特徴

次に外反股ですが、これによる影響は、股関節の荷重が増大するというものです。
人間は二足で立位を保持しているとき、両方の股関節に同じだけの荷重がかかります。
次にこれを片足で立位をとった場合、単純に片方の股関節に加わる荷重が2倍になるというわけにはいきません。

パウエルの理論というものがあり、これによると荷重がかかっている側の股関節には体重の約3倍の力が加わっていると言われています。
片足立位を取った際の骨盤はほぼ均衡を保っており、つまりこれは体重に対し筋の力が釣り合っていると分かります。
この股関節合力、つまり筋力と体重の合力が体重の約3倍の力となって加わるわけです。
しかし、これは正常の頸体角をもった人の場合で、頸体角が垂直に近づき重心位置と筋との距離が近づくことで、筋には更に強い力が要求されます。
例えば、頸体角が150°になると股関節には6倍以上の力が加わるとされています。

このように内反股と外反股は、股関節にとってさまざまな影響が起こります。
頸体角を変えるのは困難なため、これにより起こる症状や変化を考慮してプログラムを組むことが重要となるでしょう。

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