肩鎖関節脱臼は特にコンタクトスポーツの現場で遭遇することが多い外傷です。
受傷機転としては、タックルなどで相手と衝突した際に肩鎖関節部へ前方あるいは上方から直逹外力がかかることによって発症する場合と、転倒で肩から落ちた際に上腕骨頭を介して介逹外力がかかることによって発症する場合があります。
特に肩から転倒し上肢が内転位で肩峰に強い回旋方向への外力が加わった場合、重症度が高くなりやすいです。
肩鎖関節脱臼受傷時に肩周囲に強い外力が加わることで、鎖骨遠位端骨折や烏口突起骨折、肩関節脱臼、肩板損傷を合併する可能性があります。
また肩甲骨が下方に転位することで、二次的に胸郭出口症候群を引き起こす可能性があります。
受傷直後は肩鎖関節部の疼痛と圧痛が著明で、徐々に炎症による腫脹が出現してきます。
痛みのために上肢の自動運動が困難となる場合が多く、特に屈曲・外転・伸展で強い運動時痛と可動域制限が生じます。
完全脱臼では、視診にて鎖骨が浮き上がる変形を認めます。
陳旧例では変形遺残のみで症状を認めない例もありますが、関節円板の損傷を合併している場合は肩鎖関節部に圧痛や水平内転時の運動時痛、軋轢音が残存することがあります。
完全脱臼では肩甲帯の鈍重感や肩甲上腕リズムの破綻による肩甲帯周囲筋の筋力低下や易疲労性を呈することがあります。