腱は、骨格筋と骨を結び付けている強靭な結合組織で、筋収縮によって得られたエネルギーは、腱によって骨に伝えられます。腱は膠原繊維がほとんどで、筋肉のような伸縮性はないので外傷や急激な筋の収縮で引き伸ばされると断裂が起こります。代表的なのがアキレス腱の断裂で、他には手指の腱や肩腱板・上腕二頭筋の長頭腱・膝蓋腱で好発します。病態生理は、切創などによる開放性の断裂と、創がなくて生じる閉鎖性の断裂(皮下断裂)があり、断裂の程度によって腱全体が離断した完全断裂と、一部だけが切れる部分断裂(不完全断裂)とに分類されます。断裂部は、鋭利に切断される場合と、筆状に縦に引き裂かれる場合があります。特に、慢性的な腱の炎症があると筆状のような断端になります。原因は、スポーツ外傷や骨折にともなうほか、退行変性・関節リウマチ・化膿性炎症などによって腱が弱くなって切れる病的断裂があります。症状・所見は、疼痛・皮下の陥凹・圧痛・内出血などを生じます。アキレス腱断裂では、断裂部の皮下の陥凹に触れると、同部に圧痛がみられます。上腕二頭筋長頭断裂では、二頭筋遠位に力こぶが出現します。検査・診断は、視診・触診・整形外科的テスト、画像所見から総合的に診断します。治療法は、まず受傷直後にRICE処置を行うことが重要で、保存療法か手術療法かは断裂を生じた部位や損傷状態、年齢、基礎疾患などの患者背景に基づいて選択されます。また、早期から適切なリハビリテーションを行うことも重要です。